夏の夜の夢

作:ウィリアム・シェイクスピア

訳:小田島雄志

音楽:宇崎竜童

演出:蜷川幸雄

出演:白石加代子、宮本裕子、山下裕子、鈴木豊、大石継太、瑳川哲朗、伊崎充則、他

2000年5月13日 大阪、近鉄劇場

 5年前に近鉄アート館で観たものの再演。『夏の夜の夢』は色々な演出(ただしテレビ)で観たが、このプロダクションはその中で最も気に入ったもの。出来るだけ多くの人に観てもらいたい秀逸な舞台。今回も、バンド仲間で作詞をしている友人を無理やり連れていった。

 再演なので演出自体はほぼそのままだが、小さな劇場で客席がステージをぐるりと囲んでいた前回と違って、いわゆる普通の劇場での上演なので、一体感やインパクトはだいぶ薄まってしまった印象。職人達の場面もあれほど大ウケだったのに、今回はそれほどでもない(役者達の芝居が妙にこなれてしまったせいもあるけど)。キャスティングは、白石&瑳川の大物コンビはそのまま、若者四人は、つみきみほと大沢たかおの代わりに宮本裕子と鈴木豊が登板。

 宮本裕子は『レ・ミゼラブル』のコゼットやピーターパンで注目された実力派で、最近の蜷川作品に連続出演している逸材。特に『かもめ』のニーナは素晴らしかった。鈴木豊は無名塾出身の、これも実力派。しかし、今回のMVPはパックの声とフィロストレートを演じた『親子ジグザグ』の子役出身、伊崎充則君だろう。95年公演の松田洋治も子役出身だったが、伊崎君はひときわシャープで凛とした佇まいがあり、声だけでもかなりの存在感。フィロストレートなんて、ちょこっと出て来て終わりの役なのに、一瞬にして「この人、うまい!」と言わせる雰囲気がある。

 それにしてもカーテンコール、宇崎竜童の妙にポップなマーチに合わせて客席が手拍子をする感じ、子供向けイベントみたいだから止めて欲しい。それまでの舞台のクォリティが一気に下がるようで、どうにも歯がゆい。ちなみに同行の友人は、帰る道すがらずっと「伊崎はさすがだ、伊崎はやると思っていた」と伊崎君ばかりを大絶賛。

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