三十年前、蜷川幸雄の大劇場デビューとなったこの戯曲、若い役者を揃えての再演である。私は十年近く前に佐藤藍子、大沢たかお主演の舞台も観ているが、今回は藤原竜也、鈴木杏という、『ハムレット』で共演したばかりのコンビ。 今回は、様々な国の若者の顔写真が貼られただけの、すごくシンプルなセットで、役者の芝居に最大限の重点を置いた印象。これだけリアリズムに反抗したセットなのに、劇の世界に激しく心を揺すぶられるのは、いかに役者の芝居に力があるかを示す証拠かもしれない。これはこれで感動するし、凄い事だとは思うけど、私はセット美術や照明に独創性がある舞台も好きだ。その方が、役者だけでなく、様々な分野のアーティストが共通の場で自己表現をしているという、チームとしての面白さを感じられる。蜷川演出の“ロミ・ジュリ”は前回よりもさらに、生き急ぐというか、死に急ぐというか、死に向かって疾走する若者達の鮮烈さが強まっているように思う。 |