ミュージカル リトル・ショップ・オブ・ホラーズ

脚本・作詞:ハワード・アッシュマン

作曲:アラン・メンケン

演出:吉川徹

出演:山本耕史、上原多香子、小堺一機、越中睦、浦嶋りんこ、Tina、他

2005年12月17日 大阪、シアターBRAVA!

 オフ・ブロードウェイの傑作ミュージカル、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の日本版がユニークなキャスティングで上陸。『アラジン』『美女と野獣』などで、当初低迷していたディズニー・アニメを大復活させた作曲家、アラン・メンケンの出世作だ。リック・モラニス主演で映画化もされているが、映画の方はB級っぽくてどうもピンと来ない感じだった。音楽も、メンケンにしてはロック色が強く、若書きの未熟さもあって、個人的には他のメンケン作品の方が好きなのだけれど、ともかくどんな舞台なのか観に行く事に。

 実際に舞台で観ると、音楽は意外に効果的でいい感じだが、ストーリー自体が割と普通の青春物をベースにしていて、特に見栄えがする感じではない。そこへ吸血植物登場。人の血を餌にどんどん成長してゆくこの植物の声(歌)を、和田アキ子が担当している。山本耕史も小堺一機も芸達者で上手いけれど、舞台役者としては声が細身で迫力に欠ける感じ。それに輪をかけて線が細いのが元SPEEDの上原多香子。グループの中でも歌担当ではなかったけど、オールディーズっぽい演技も歌唱力もちょっと??かな‥‥。

 対照的に、コーラス三人娘は迫力満点。ドリカムでお馴染み浦嶋りんこもさる事ながら、R&B系の歌姫として少し前に結構いい曲を出していたTina(アルバム持ってます!)、尾藤イサオの娘・尾藤桃子も、声量・歌唱力ともにいい感じ。主役級の人達にこの歌唱力があったら、とついつい無い物ねだりをしてしまう。映画でスティーヴ・マーティンが演じていたサディスティックな歯科医は、元・リュシフェルのリード・ヴォーカリスト、越中睦がエキセントリックに演じている。この人、蜷川幸雄作品以外の舞台に出るのは初めてらしい。

 ラスト、巨大な食肉植物が舞台を埋め尽くすクライマックスに至って、これか!と大声を上げそうになった。なぜこのミュージカルがオフ・ブロードウェイで伝説的なヒットを記録したのか、その理由が分かった。とんでもなく巨大な食肉植物が、舞台中央で勝ち誇ったように揺れる視覚的スペクタクルと、登場人物全てが結局この植物に飲み込まれてしまう(劇中では地球全体が征服されてしまうように感じられる)という毒気の強さがポイントなのだ。映画版はラストを変更していたのである。作品を原点に戻したかったという演出家・吉田徹のコンセプトは成功だと思う。彼によれば、当初舞台に忠実に作られた映画版は試写会で全くウケず、フランク・オズ監督は無理矢理ラストを変更させられたのだという。いかにもハリウッドらしい話だ。

まちこまきメモ

 振り付けがKABA.ちゃん、お花のお化け(?)の声を和田アッコ、と、何がなんだかわからないけど、なんとなく紅白っぽいノリを想像して見に行った。メインキャストを差し置いてなんだが、浦嶋りんこにばっかり目がいってしまう(色んな意味で存在感ある人なので。しかも今回はキュートなKABA.ちゃんダンスも披露)。山本耕史、歌上手いやん、舞台いけるやん、と思っていたら、彼は元々舞台出身だとか。知らなかった。食肉植物の歌は、今回和田アッコに合わせて、やたらと「ハ!」と叫ぶブルースにアレンジしたのかと思っていたら、元々そういう歌だとか。元々そういう歌だから和田さんが選ばれてたのですね。これも知らなかった。ラスト、笑えました。(特に植物に同化して蔓のブランコで上下している上原多香子が。)

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