オフ・ブロードウェイの傑作ミュージカル、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の日本版がユニークなキャスティングで上陸。『アラジン』『美女と野獣』などで、当初低迷していたディズニー・アニメを大復活させた作曲家、アラン・メンケンの出世作だ。リック・モラニス主演で映画化もされているが、映画の方はB級っぽくてどうもピンと来ない感じだった。音楽も、メンケンにしてはロック色が強く、若書きの未熟さもあって、個人的には他のメンケン作品の方が好きなのだけれど、ともかくどんな舞台なのか観に行く事に。 実際に舞台で観ると、音楽は意外に効果的でいい感じだが、ストーリー自体が割と普通の青春物をベースにしていて、特に見栄えがする感じではない。そこへ吸血植物登場。人の血を餌にどんどん成長してゆくこの植物の声(歌)を、和田アキ子が担当している。山本耕史も小堺一機も芸達者で上手いけれど、舞台役者としては声が細身で迫力に欠ける感じ。それに輪をかけて線が細いのが元SPEEDの上原多香子。グループの中でも歌担当ではなかったけど、オールディーズっぽい演技も歌唱力もちょっと??かな‥‥。 対照的に、コーラス三人娘は迫力満点。ドリカムでお馴染み浦嶋りんこもさる事ながら、R&B系の歌姫として少し前に結構いい曲を出していたTina(アルバム持ってます!)、尾藤イサオの娘・尾藤桃子も、声量・歌唱力ともにいい感じ。主役級の人達にこの歌唱力があったら、とついつい無い物ねだりをしてしまう。映画でスティーヴ・マーティンが演じていたサディスティックな歯科医は、元・リュシフェルのリード・ヴォーカリスト、越中睦がエキセントリックに演じている。この人、蜷川幸雄作品以外の舞台に出るのは初めてらしい。 ラスト、巨大な食肉植物が舞台を埋め尽くすクライマックスに至って、これか!と大声を上げそうになった。なぜこのミュージカルがオフ・ブロードウェイで伝説的なヒットを記録したのか、その理由が分かった。とんでもなく巨大な食肉植物が、舞台中央で勝ち誇ったように揺れる視覚的スペクタクルと、登場人物全てが結局この植物に飲み込まれてしまう(劇中では地球全体が征服されてしまうように感じられる)という毒気の強さがポイントなのだ。映画版はラストを変更していたのである。作品を原点に戻したかったという演出家・吉田徹のコンセプトは成功だと思う。彼によれば、当初舞台に忠実に作られた映画版は試写会で全くウケず、フランク・オズ監督は無理矢理ラストを変更させられたのだという。いかにもハリウッドらしい話だ。 |