アントニーとクレオパトラ

作:ウィリアム・シェイクスピア

訳:松岡和子

演出:蜷川幸雄

出演:吉田鋼太郎、安蘭けい、池内博之、橋本じゅん、中川安奈、熊谷真美

2011年10月29日 大阪、シアターBRAVA !

 久々のニナガワ・シェイクスピア、ほぼ1年振り。今回は原作の戯曲を読む時間がなかった。このシリーズも主要な大作はかなり上演が済んでいるので、後はマイナーな作品が多くなってきている。

 今回は《タイタス・アンドロニカス》に登場したオオカミの乳を飲む兄弟の像など、巨大な彫像をたくさん用意し、その入れ替えでローマとエジプトの舞台転換を行っている。照明も美しいし、阿部海太郎の音楽も、例えば宴会で皆が歌う少年ヴォーカルの歌(圧倒的な盛り上がり!)やエジプトでの民族舞踊など、挿入曲もかなりのハイレヴェル。

 それでも、劇としてはどこか弱いというか、シェイクスピアらしい見事な例えや名言、仕掛けの効いた展開などはほとんどなく、単なる国家規模に拡大した下世話な恋愛話という感じがしないでもない。シェイクスピアやギリシャ劇では主要人物が死ぬに際してやたらと喋るものだが、これも例外ではなく、死ぬ前も後も長い長い。さらに、アントニーに至ってはその最期の歯切れの悪い事。ただ、クレオパトラが自害に使った毒蛇が自分で舞台袖にはけてゆくのは、何か凄い演出だなと思った。一歩間違えればお笑いになるようなリスキーな演出だ。

 役者の演技は立派なもので、さすがに蜷川演出だけあって芝居がドラマティックに構築されている。ストレートプレイもシェイクスピアも初めてという安蘭けいも立派な芝居だけれど、個人的には、劇団☆新感線の橋本じゅんに拍手を贈りたい感じ。この人が真面目な演技をしているのは初めて観たが、これが素晴らしくって。泣きました。

まちこまきメモ

 シャイクスピア劇を何本も観てきたので、かなり慣れてきてしまったのか、今ではあり得ないようなテンションの高い台詞にも、あんまりびっくりしなくなってきた。特に、吉田鋼太郎は何度も観ているので、上手くて当たり前というか、すごい芝居をしていても、割と普通に感じてしまう。安蘭さんは、蜷川劇初めてとは思えない、堂々としたクレオパトラだった。これからも蜷川さんと組むかもしれないな、と思った。

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