ウーマン・イン・ブラック 〜黒い服の女〜

作:スーザン・ヒル

脚色:スティーヴン・マラトレット

訳:川本華子

演出:ロビン・ハーフォード

出演:斉藤晴彦、上川隆也

1999年12月4日 大阪、シアター・ドラマシティ

 ホラー演劇というものにはあまりお目にかからない。中島らも作の『こどもの一生』は一応ホラー劇だが、あれは結構ひねりのある話で、一般的にイメージされるホラーとはちょっと違った。今回の舞台、原作はスーザン・ヒルの『黒衣の女』で、モダンホラーの分野ではそこそこ知られている小説。読んだ事はないが、私もタイトルは知っている。それだけなら特に興味の湧かない舞台だが、夕方のニュースか何かで“今、世間を騒がせている話題の舞台”と取り上げられたのがいけない。VTRでは、中年の男性客が「いやあ、前の席の女性が悲鳴を上げるもんで、そっちの方が恐かったですよ」みたいな事を言っている。ものすごく怖がりで小心な私だが、好奇心が強いので、ここまで言われるとどんなものか確かめてみたくなる。演劇で観客を怖がらせる事なんて、本当に出来るのだろうか。

 内容はいかにも英国風の幽霊屋敷物で、男優による二人芝居。日本公演は今回が四度目の再演で、斉藤晴彦は初演からずっと出ているが、相手役の上川隆也は、萩原流行、西島秀俊に続いて三人目である。静かな中で推理ミステリ風の芝居が展開し、照明と効果音が主な演出効果を担っている。つまり、客席から悲鳴が起こるような類いの下世話な出し物ではなく、もっとオーソドックスなストレートプレイという感じ。二人芝居だから当然だが、むしろ会話劇だ。ホラー仕立てのドラマとしては良質の舞台で、劇場をお化け屋敷に見立てたような派手なエンターティメントさえ期待しなければ、正統派の英国演劇として充分満足できる作品。

 上川隆也は、演劇集団キャラメルボックスの看板俳優で、学生時代にも私の友人に熱狂的なファンがいたが、今回の舞台でみる限り、手堅い演技で真面目な印象。斉藤晴彦は芸達者なイメージがあったが、いくらホラーだからといって、声が小さすぎて全然きこえない時があるのはちょっと‥‥。声自体も、かなり線が細い。それとも、当日券だったので、最後列のパイプ椅子で鑑賞したせいだろうか。

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