毎晩寝る前に語りかけてくる、ぬいぐるみのクマちゃん。ポーランドの国民的アニメ初登場

おやすみ、クマちゃん』劇場版 (1975〜87)

 

 はちみつとアイスクリームが大好きなくまのぬいぐるみが、毎晩ベッドに入る前に今日の出来事をお話してくれます。この、各話7分の楽しい人形アニメは、映画の国ポーランドの作品だけあって、可愛らしいキャラクターや味のあるデザインと色彩、豊かなニュアンスによって、大人にも充分アピールする素敵なアニメ作品になっています。エピソードの内容は毎回他愛のないものなのですが、クマちゃんが最後に導き出す教訓は、いかにも説教じみていて子供向け。時に「旅行は計画的にね」なんて、とんでもなく強引な教訓が飛び出したりしてけっこう笑えます。

 クマちゃんをはじめキャラクターの声はダミ声のおっちゃんが一人で全て担当。最初と最後の歌もやたらと表情豊かに歌っていて、ほとんど悪ノリ状態です。しかし、同じ中年おやじの一人芝居でもファルセットが気持ち悪かった『ピングー』と較べれば、ダミ声丸出しの開き直りの方がはるかに潔い感じがします。ちなみに、ケロポンズによる日本語吹替はどこまでも健全な子供向けアニメの雰囲気で、明朗活発さが出た代わり、オリジナルの不思議な味わいは消し飛んでしまいました。個人的にはオリジナル音声を支持します。

 さて、お隣チェコの人形アニメは既に有名ですが、DVDのパッケージによると実はポーランド、世界最大の人形アニメーション大国であるそうです。本作を制作している国営人形アニメ・スタジオ“セ・マ・フォル”は、日本でも公開された『ムーミン パペット・アニメーション』など1400本ものアニメを送り出し、ヨーロッパ諸国の子供達に愛され続けている由。チェコやロシアのアニメに較べて日本への紹介が遅れたのは、そのほとんどが子供向け作品であったためであるようです。

 クマちゃんはポーランドの絵本『こぐまのウシャテク』のキャラクターで、国内ナンバーワン子供雑誌『Mis』のキャラクターにもなっている人気者。国営放送のTVPとセ・マ・フォルが共同製作したアニメは全104話、実に12年もの製作期間をかけて放映されてきた長寿番組で、近隣諸国でも子供はみんなこれを観てから寝るというくらいのメジャー作品だそうです。この劇場公開版は、春夏編5話、秋冬編5話の全10話がチョイスされたもの。プレミアム・エディションのDVDには3話分の絵本が入ったブックレットと、特典映像『こぐまのウシャテク』が収録されています。本編とは微妙にデザインや雰囲気の違う9分のアニメですが、これがどういう映像なのかは全く説明がありません(試作品なのかも)。

 ちなみに原作の絵本も邦訳されています(エデン刊)。

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