新世代らしいモダンなセンス溢れる、ポップなアニメ作品集

ガリク・セコ短編集

 

 チェコの人形アニメーションでは、トルンカやゼマン達より若い世代に属するセコは、ヘルミーナ・ティールロヴァーのアニメーターを担当した後、トルンカ・スタジオで自身の作品を発表しました。製作年代も70〜80年代と比較的新しいのが特徴です。作風もモダンで、人形の表情や造型もよりリアリスティックで繊細に作られているし、音楽や映像の表現も多彩。結構おしゃれな作品も多く、オープニングやエンディングのクレジットなどデザインの可愛さが目を惹きます。DVDは単品の他、ティールロヴァーの作品集二枚と合わせて三枚組にしたボックスも出ています。

『マイスター・ハーヌシュ』(1976) 13分

 プラハの旧市街にある有名なからくり時計にまつわる伝説をアニメ化。緻密な音楽、繊細な人形造型など、旧来のチェコ・アニメにはないモダンなセンスを感じさせます。ナレーション入りで、最後には本物のからくり時計とプラハの街の実景映像に移り、ドキュメンタリー的な雰囲気もあり。

『ファウストの家』(1977) 12分

 こちらもカレル広場に面した実在の建物にまつわる、学生ファウストの伝説を映像化。学問と金銭欲の間で苦悩する学生のお話で、やはり最後にファウストの家と街の実景映像が挿入されます。人形のデザインも精密で多彩。

『本棚の世界』(1982) 10分

 本棚を舞台に、様々な本を動かしたアニメーション。オブジェクト・アニメの傑作と言われているそうですが、本によるパフォーマンスで終始一貫していて、アイデアとしてはそれだけのような気も・・・。

『シューズショー、あるいは自分勝手な靴』(1984) 11分

 こちらも種々多様な靴を総動員し、無人の靴屋でショーを展開。師匠ティールロヴァーのお家芸を、より男性的なアイテムでヴァリエーションにした感じでしょうか。あの手この手を駆使しているものの、内容としてはそれだけのような・・・。

『サボテンさん、ちょっと』(1984) 11分

 ある窓辺に置かれたサボテン達のパントマイム。部屋の主が老人、女性、男性と変わってゆくにつれて環境も変化してゆきます。これも実景から入る作品。音楽がポップで洒落ています。

『僕の友達はチクタクいう』(1987) 11分

 捨てられたクマのぬいぐるみと壊れた目覚まし時計の友情を描いたキュートな作品。セリフ入りです。他愛のないストーリーですが、エンディングがシャレていて素敵。これも街の実景映像から開始。

『卑怯者、出てこい』(1988) 12分

 クマと目覚まし時計のシリーズ続編。お話自体は大したものではないのですが、このシリーズはオチからエンド・クレジットに突入するタイミングが小粋で絶妙です。やはり実景映像から入りますが、本作ではキャメラが地上と空の間で激しく上下にパンする所で、細かく実景映像を挟み込んだりして遊び心満点。こういった辺り、旧世代のアニメ作家達にはないセンスですね。

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