“人形アニメ、レリーフ、２Ｄ、実写、切り絵と多彩な手法を網羅した、才人ポヤルの作品集４枚セット”

ポヤルさんのＤＶＤ ＢＯＸ

　チェコの人形アニメ界において、トルンカやゼマン、ティールロヴァーの次の世代を代表するブジェチスラフ・ポヤルのまとまった作品集。四枚組のボックスですが、それぞれ単品でも発売されています。ただし、一枚のディスクに三、四作、せいぜい五十分前後しか入っていないので、できれば二枚組にまとめて欲しかった所です。ポヤルは多作な人で、これで全部とは行かないものの、既発のチェコアニメ傑作選１、２に入っている代表的な短編や、『ふしぎな庭』『ぼくらと遊ぼう！』シリーズと併せると、ほぼポヤル作品の全体像を俯瞰できるのではないでしょうか。彼の創作やプロフィールについては、同時期に書籍も発売されましたので、下にリンクを貼っておきました。併せてご参考にどうぞ。

　彼は元々トルンカ門下の優秀なアニメーターで、そのトルンカが美術を担当している作品や、ミロスラフ・シュチェパーネク、ズデネック・セイドルなど名の知れたアーティストが参加した作品もあります。全体的にポップで明るい作品や社会風刺的な内容のものも多く、個人的には代表作の『飲みすぎた一杯』や『ナイトエンジェル』、『探偵シュペイブル』辺りのタッチを期待していたので、そういう作品がほとんどないのは少々残念でした。

１　ポヤルさんの　バン、バン、バーン

　平面アニメ、いわゆる２Ｄの作品を集めたディスク。風刺の効いた日本未公開作も多数収録。

『名声』（1959）　13分

　芸術的な煙を吐く煙突を「現代のレンブラント」と祭り上げる人々。芸術消費への痛烈な批判。

『なぜ人は犬を飼うのか』（1979）　11分

　犬の実写映像から入る日本未公開作。古代に遡り、犬が人に飼われるようになった来歴を描く。

『バン、バン、バーン』（1979）　10分

　対立する国家同士が軍拡を続け、無意味に武器を備蓄してゆく様をコミカルに風刺。日本未公開。

『もしも…』（1981）　9分

　国家が武装のために使うお金、もし平和のために使ったとしたら…。日本未公開作品。

『はじめの一歩から』（1987）　9分

　才人パヴェル・コウツキーと共同で製作、監督。人間の想像力を皮肉った日本未公開作品。

２　ポヤルさんの　ネコのお絵描き

　実写の俳優と切り絵の子ネコ二匹を組み合わせたシリーズ三作品を収録。悪さばかりしながら、飼い主の顔色を窺って甘えまくるネコ達は、人間の子供にも通じるかわいさと憎たらしさ満開。デザイン性の高いオシャレな美術はシュチェパーネクの手になるもの。

『ネコの言葉』（1960）　15分

『ネコのお絵描き』（1960）　13分

『ネコの学校』（1961）　15分

３　ポヤルさんの　真夜中の大冒険

　師匠トルンカが美術を担当した作品を中心に収録したディスク。

『リトル・アンブレラ』（1957）　15分

　多彩な手法を駆使して、おもちゃ達のパーティを描く、ポヤルの立体アニメ代表作の一つ。ロープの上で跳ねる積み木の表現など、画期的なアイデアとテクニックで世間を驚かせました。紳士の人形のみトルンカのデザイン。ズデネック・セイドルも美術で参加しています。

『真夜中の大冒険』（1960）　13分

　新型の電車が登場し、主人に顧みられなくなった機関車の物語。美術はトルンカ。

『理想』（1963）　14分

　トルンカは不参加。マイ・カー取得の夢が、逆に主人公を振り回す足かせになってゆく皮肉。

『爆弾マニア』（1959）　10分

　本作のみ２Ｄアニメ。実験好きの子供が作った爆薬が戦争に使われて…。美術はトルンカ。

４　ポヤルさんの　小さな道化師ファンファロン

　立体人形アニメのみを収録したディスク。

『ビリヤード』（1961）　9分

　一人の男性の苛立ちと八つ当たりが、周囲の人間に連鎖してゆく様を軽快に描く。美術はセイドル。

『小さな道化師ファンファロン』（1968）　16分

　積み木や人形、イラストが織りなす一大サーカス。カラフルなレリーフ・アニメーション。

『快適な住まいとは？』（1959）　15分

　家博士が若いカップルに収納や家具配置のポイントをレッスンする、異色の人形アニメ。　

『りんごのお姫様』（1973）　14分

　ポヤルが久しぶりに童話的素材と古典的な人形アニメに回帰した作品。師匠トルンカの衣鉢を継ぐ、チェコ・アニメならではの詩的で美しい世界を展開。美術はシュチェパーネク。

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