チェコの国民的アニメ「もぐらのクルテク」で有名な、ミレルの多彩な作品集

クルテクとズデネック・ミレルの世界 1〜4

 

 もぐらのクルテク・シリーズで有名なズデネック・ミレルの短篇作品を集めた、全4枚のセット。トランク風の可愛いケースに収納されていたり色々な特典付きのボックスですが、単品と共に、現在は中古市場しかなさそうな状況。別に出ているクルテクのみのシリーズも全6枚、42話のボックス・セットが廃盤で、単品も全て適正な中古価格で入手できるとは限らない状況です(リンクは貼っておきます)。

 クルテクは、本国チェコでは誰もが知っている国民的アニメ。人間の子供の声をそのまま使った笑い声がとても可愛いです。初期の作風は特に、自然に対する感覚がいかにもチェコの作家らしく、音楽もヤナーチェクのそれを思わせるようなものもあったりしますが、後に行くと電子音やジャズなども取入れていて、ストーリーも自然破壊と戦うような内容がちょくちょく出てきます。

 当シリーズはそのクルテクと、同系列のコオロギくんのシリーズに、他の短篇作品を混ぜてシャッフルしたもので、実写のパペット・アニメもあったり、より多彩な世界が楽しめます。ただ、ミレルは絵本の分野でも名が知られている美術畑の人で、収録作品も全てミレルが監督している訳ではありません。美術のみを担当した作品も含まれているので、ご注意下さい。

◎クルテクとズデネック・ミレルの世界1

 監督、脚本、美術を担当、『おひさまを盗んだ億万長者』は監督のみ、『誰が一番強いのか』は監督、脚本のみ、『くまのクブラとクバ・クビクラ』は美術のみ担当した作品。

『知りたがりワンちゃんと水』 (1960年) 9分

 寝ている間に消えたボウルの水の行方を訊いて回る、ワンちゃんのお話。ミレルの絵本を彷彿させる、可愛らしいタッチのキャラクターが見所。

『コオロギくんとバイオリン』 (1978年) 5分

『コオロギくんとクモ』 (1978年) 5分

 ヴァイオリンを弾くコオロギくんの短編シリーズ。『クルテク』シリーズと絵のタッチが似ていますが、コオロギくんはそちらにも登場します。クモがほとんど人間みたいなデザインで、完全に悪者扱い。

『おひさまを盗んだ億万長者』 (1948年) 8分

 数々の賞に輝いたミレルの監督デビュー作。細密なペン画のようなタッチで、自分の病気を治す為に太陽を部屋に閉じ込めた億万長者の話を、格調高く描写。緊迫感溢れるオーケストラの音楽もモダン。劇場未公開。

『さんかくとしかく』 (1965年) 8分

 三角形と四角形が鬼ごっこして遊ぶ様を軽快な音楽に乗せて描いた、グラフィカルなアニメ。

『誰が一番強いのか』 (1951年) 11分

 奴隷の青年が、旅人に親切にしたお礼に魔法のペンダントを貰う。魔法の力で親方、王、太陽とどんどん強い存在に姿を変えてゆく彼だが…。寓話、説話的な色彩の濃い短篇。

『くまのクブラとクバ・クビクラ』 (1955年) 16分

 食いしん坊のクマと熊使いのお話。静止画を使ってスピーディにコラージュしたりズームを加えるなど、独特の作風。普通のアニメーション手法とは少し違います。

『もぐらくんとブルドーザー』 (1975年) 7分

 ミレルの代表作、クルテクのシリーズ。自然を破壊する人間文明と戦うエピソードも多いですが、今回もブルドーザーと格闘。劇場未公開。

◎クルテクとズデネック・ミレルの世界2

 監督、脚本、美術を担当、『アオネコとお友達』は美術のみ、『キツネとオオカミ』は共同美術のみ担当した作品。

『知りたがりワンちゃんとこいぬ』 (1960年) 11分

 ひよこを育てるめんどりに憧れ、川で見つけた卵を温めるワンちゃんだが…。

『コオロギくんとのこぎり』 (1979年) 5分

『コオロギくんとエンジン』 (1978年) 5分

 このシリーズも環境破壊との闘いが多いですね。今回もそれぞれ、葉っぱを食べ尽すコガネムシ、車に乗って排気ガスをまき散らすハリネズミ(なんで?)との格闘話。

『アオネコとお友達』 (1959年) 14分

 3匹の個性的な猫と、中国からきた子猫シャウチンとの友情物語。劇場未公開。

『ヘルゴランド島のロマンス』 (1977年) 13分

 絵画のようなタッチで描かれたアニメーション。チェコの国民的詩人ヤン・ネルダの詩をモティーフに、灯台に住む貧しい娘とその父親の物語を綴る。

『キツネとオオカミ』 (1956年) 17分

 ミレルが美術を担当した実写のパペット・アニメ。オオカミとキツネによる魚の奪い合い。

『もぐらくんとまほうのえ』 (1999年) 5分

『もぐらくんとつばめ』 (2000年) 6分

 クルテク・シリーズ。書いた絵が全て本物になるという荒唐無稽なネタ切れ的エピソードと、群れからはぐれたつばめを春まで看病するという、ものすごく普通の、ほのぼのしたエピソード。

◎クルテクとズデネック・ミレルの世界3

 監督、脚本、美術を担当、『クマのクプラとクバ・クビクラ』は美術のみ担当した作品。

『知りたがりワンちゃんとハチミツ』 (1960年) 10分

 甘い物好きなワンちゃんがハチミツをなめるていると、蜂の総攻撃にあう。その夜の夢で、ハチミツを作るのがいかに大変かを教えられたワンちゃんは、翌日、外敵から蜂の巣を守るが…。やや教訓めいているけど、最後は暖かい気持ちになるお話。

『コオロギくんとコントラバス』 (1979年) 5分

『コオロギくんとチューバ』 (1979年) 5分

 コオロギくんがヴァイオリン弾きだからか、楽器のお話が多いシリーズでもあります。ただし前者は人間が使う巨大サイズのコントラバスで、コオロギくんが中に入ってヴァイオリンを演奏するという、なんかややこしい設定。

『あかずきん』 (1948年) 7分

 実写のパペット・アニメーション。内容は有名なおとぎ話ですが、ビッグバンド・ジャズを使用する事で妙にモダンな雰囲気になっています。チェコでは薬品メーカーのCMとして使われたそう。

『くいしんぼうのすずめ』 (1962年) 10分

 仲間のエサも独り占めするほど食いしん坊のスズメが、大きなエサにありつくが…。ミレルは同じモティーフで絵本も書いていて、日本では『せかいでいちばんおかねもちのすずめ』というタイトルで出版されています。

『クマのクプラとクバ・クビクラ スプーン村とナベ村』 (1973年) 16分

 ミレルが美術を担当した、静止画を動画に見せる感じのアニメ。第1巻にも入っていたシリーズですが、今回もオバケのバルブハが登場。劇場未公開。

『おんどりとめんどり』 (1953年) 12分

 いつもエサを分け合う、仲良しのニワトリ達。あまりに美味しいイチゴを見つけたおんどりがそれを独り占めして喉を詰まらせるが、めんどりの機転で助かり、連れ合いの大切さに気付くという教訓めいたお話。クルテクやワンちゃんのシリーズと違い、ややリアルなタッチで描かれたアニメです。

『えかきのもぐらくん』 (1972年) 11分

 クルテク・シリーズ。自分や森の仲間達を絵の具でペイントしたら狼が逃げていったという、エコなのか自然破壊なのか微妙な設定のお話。劇場未公開。

◎クルテクとズデネック・ミレルの世界4

 監督、脚本、美術を担当、『コネコのいたずら』は美術のみ、『ゆれる木馬』は原作と美術のみ、『お父さんは12人』は美術協力のみ担当した作品。

『イモムシくんは大スター』 (1967年) 16分

 ハーモニカに合わせて踊るイモムシが大スターになるが、クリスマスの夜にいなくなって…。民謡風の音階を使ったテーマ曲や、ジャジーなアレンジなど音楽の素晴らしさが耳に残る作品。愛らしい動きでタップを踏むイモムシくんのダンスもキュートで、デザイン性の高いアニメーションも素敵。当ボックスの中でも出色の内容です。

『コオロギくんとめんどり』 (1979年) 5分

 定番のコオロギくんシリーズ。鶏に飲み込まれるというショッキングな内容ですが、無事救出。

『ゆれる木馬』 (1954年) 6分

 給料日に盗賊に襲われる父親を、少年が救うという荒唐無稽なお話。ラストもなぜか「皆さんもお金を貯めましょう」と、銀行のCMみたいなメッセージで終ります。クルテクのような抽象化をしない、リアリスティックな作画ですが、盗賊達がトランプのカードという設定はユニーク。

『お父さんは12人』 (1959年) 13分

 母が次々に離婚、再婚をするため、誰にも髪をとかしてもらえないボサボサ少女のお話。最後まで救いがない、殺伐とした短篇です。美術協力を行っただけだからか、ミレルの個性はほとんど感じられません。

『月のおはなし』 (1958年) 14分

 机の上に置かれた絵の中の少女と、月からやってきた白い妖精の、満月の間だけのはかない出会い。一部実写も使ったアニメ作品で、絵本のように可愛らしくデザインされたキャラクターと、詩的なパントマイムで構成されています。マル・デル・プラタ国際映画祭映画批評賞、ロカルノ国際映画祭ベストアニメーション映画部門を受賞。

『コネコのいたずら』 (1959年) 11分

 本物の猫と毛糸の猫が、人間の留守中にじゃれあう様を描写。ストップ・モーションも使わずパペットで撮影しているようで、いわば単なる実写映画です。

『もぐらくんとおさかな』 (2000年) 5分

『もぐらくんとこうつうじこ』 (2002年) 6分

 クルテク・シリーズ。劇場未公開の前者は、大きな魚から小さなお魚を守る話で、リリカルなメロディを繰り返す音楽が耳に残る秀作。後者は車の事故で瀕死の重傷を負い、幽体離脱しかけるばかりか、全身に包帯を巻いて満身創痍の姿をみせるクルテクが衝撃的。仲間が携帯電話で救急車を呼ぶなど、現代的な描写もあります。

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