“ハンガリーを代表するアニメーション作家の、美しくユニークな作品集”

『スチールス 〜追憶のスケッチ〜』 マリア・ホルヴァット作品集

 ハンガリーを代表するアニメーション作家、イラストレーターである彼女は、1952年、西部のペーチェ生まれ。高校で彫金を学んだ後、71年にケチュケメート・アニメーション・スタジオの創立に参加。自然と詩と子どもたちを愛し、緻密な動きと詩の共鳴を基調とする作風は、国際的に高く評価されています。

 ハンガリーで30年続く人気アニメ、『ハンガリアン・フォークテイルズ』では90年代から中心となるなど、商業作品の分野でも売れっ子。87年には第2回広島国際アニメーション・フェスティバルのゲストとして、初来日しています。

 この作品集のDVDはドーラ・ケレステシュ、イシュトヴァーン・オロスの作品集とボックス・セットにもなっている他、『ハンガリアン・フォークテイルズ』は第6シリーズが同時期にDVD化されているので、そちらも注目。

『夜の奇跡』(1982)

 ヴェレシュ・シャーンドルの詩に鉛筆画のイラストを付けたデビュー作。フォークソングをモダンにコラージュしたような音楽は、カラーカというグループが担当しています。82年、オタワ国際アニメ映画祭・監督部門2位。

『ドア No.8』『ドア No.9』(1983)、『ドア No.2』『ドア No.3』(1987)

 中欧各国の作家に呼びかけて制作された連作シリーズ。ドアをテーマにしている他は、それぞれ意味合いもスタイルも自由のようです。ショートショートかCMのような、尺の短さだけは共通。例えば『ドア No.3』では、家族が平和に暮らす室内が刑務所で、外では囚人服を着た人々が自由に歩くという、価値の逆転した世界が描かれます。『ドア No.2』は一定のリズムで開閉するドアから、様々な動物が入ってくるという短篇。

『KAFF オープニングフィルム集』(1985〜99)

 ケチュケメート・アニメーション映画祭の、シグナル・フィルム6本。いかにもCMスポットという短い映像集ですが、そんな中にも多彩な発想力が生かされています。シンボルのヤギは、市の紋章とのこと。

『グリーンツリー・ストリート66番地』(1992)

 実写の背景にコマ撮りアニメ、スロー・モーション、ジャンプ・カットなど、多彩な手法を混合した、美しくユニークな短篇。緑豊かなロケーション、光と影を印象的に表現した詩的でノスタルジックな実景は見ものです。作中に使われている絵は、実の子供たちが描いたものとのこと。

『スチールス 〜追憶のスケッチ〜』(2000)

 レーリンツ・サボーの詩を基に、人生の一場面を様々なモティーフで表現。前衛的でも詩的でもあり、女声コーラスだけで多重録音された音楽も、民族音楽の要素があるのが面白いです。

『テリング・ストーン』(2004)

 庭の小人が、ある石の長い年月を経た嘆きの声を聞く。何百年の時の経過を表現するアニメーションは、最後に実写のビデオ映像にたどり着きます。

(合計38分、インタビュー映像付き)

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