“モノクロを基調に、だまし絵のような迷宮的世界を展開”

『タイムサイト』 イシュトヴァーン・オロス作品集

 独特の迷宮的な映像世界を紡ぐオロスの作品集。作風は主に、シンプルで太めの線を使った木版風のものと、銅版画の技法を使った精緻なものに分かれますが、一貫してモノクロのスタイルです。内容も決して分かりやすいとは言えず、少なくとも子供向けの可愛い作品はない感じ。社会主義から自由化へと突入した母国の情勢も背景にあるそうで、上下が逆転したような、だまし絵のような構図をよく取り入れるのも特色です。

 1951年、ケチュケメート生まれ。ブタベストのハンガリー・アート&デザイン大学を卒業後、舞台美術から出発してアニメーター、アニメ映画監督として活動。版画家、デザイナー、イラストレーター、ナレーター、俳優としても知られています。

 オロスは、妻でもあるドーラ・ケレステシュの初期作品で共同監督を務め、ケレステシュもオロス作品にスタッフとして参加しています。ちなみにこのDVDはケレステシュ、マリア・ホルヴァットの作品集と3枚組ボックス・セットにもなっています。

『マインド・ザ・ステップ!』(1989)

 共同住宅の階段を舞台に、エッシャーのだまし絵のような世界を描いたイメージ作品。出口のない階段を運ばれる引っ越しの荷物と、少年が遊ぶボール、オロスは閉鎖的な迷宮空間を、当時のハンガリー社会に重ね合わせたと語っています。各国の映画祭で受賞して注目を浴びた、オロスの出世作。

『ザ・ガーデン』(1993)

 少年が庭で出会った車いすの女性、そこから広がる幻想的なイメージ。非常に緻密な銅版画で描かれていて、監督自身はインタビューでエロティックな比喩だとほのめかしています。終始流れるラヴェルの弦楽四重奏曲も、作品の世界観にマッチ。

『叫び』(1995)

 木版のような、太めのシンプルな線で描写。赤ちゃんの叫びから始まり、人生の各場面を経て原点に戻るまで、全編ワンカットで表現しています。

『ブラックホールーホワイトホール』(2001) 

 ペンを持つ手の先に、またペンを持つ手が。ペン画調のタッチで、宇宙、生と死といったモティーフを次々に綴る観念的な作品。

『タイムサイト』(2004)

 細密な銅版画による深遠な作品。同じ内容の哲学的なナレーションを、男女のナレーターがほぼ同時に喋りますが、女性は過去形、男性は未来形で語り、左右に分離した各自の声は、絵の状況によってクロスし、位置が入れ替わります。

『迷路』(2008)

 9つの迷路を次々にたどってゆく、グラフィカルなイメージ作品。ラビリンスの世界を描くオロスの面目躍如たる短篇で、重力を無視した宇宙的空間や精密なタッチなど、自身の美学を存分に展開していま

(合計36分、インタビュー映像付き)

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