アートディレクター、クリエイティブディレクターとして活躍する佐藤可士和が雑誌『UOMO』で連載している対談企画、『可士和談義』を一冊にまとめたもの。実は本書は続編で、この前に『佐藤可士和×トップランナー31人』という第1弾の単行本化があります。そちらでも佐渡裕、柳井正、勝間和代、武田双雲、蜷川実花といった興味深い人達と対談を繰り広げていますが、雑誌の対談という紙面の制約があるためか、どうも記事の分量や質問の掘り下げ方に、まだ食い足りない部分があったようにも思います。 しかし、本書ではどういう変化が起きたものか、前書とは大きく印象が異なるほど内容が深く、知的好奇心や向上心を刺激する言葉がたくさん引き出されているのが驚き。聞き手としての著者のスキルが上がった事もあるのでしょうか。 例えば猪瀬直樹や竹中平蔵といった、他業種から政治に参加した人達の言葉は実に鋭利で洞察力に富んでいるし、坂本龍一や松任谷夫妻のようなアーティストからは、そんな事まで話してくれるの?というくらい、貴重な裏話を聞く事ができます。隈研吾や安藤忠雄のような、著者がリスペクトする建築界の巨匠も参加しているし、小山薫堂や秋元康のようなエンタメ界の成功者、松岡正剛のような知の巨人、大前研一や三木谷浩史、松田公太とビジネス書っぽい人選もあったり、対談相手の幅広さも尋常ではありません。 思わず唸らされる言葉はたくさんありますが、一つ記憶に残った所では、例えば、水族館プロデューサーの中村元がある身体障害者から言われたという言葉はどうでしょう。「別に俺らはバリアフリーの所に行きたいわけじゃない。この坂道を上がればすごい景色が待っていると分かれば、大変でも上がってみたい」と。それで彼は、「バリアをなくす」事よりも、「どういうバリアがあるかを見せる」活動にシフトしたそうです。 |