シンガーソングライター、岡村靖幸による雑誌『TV Bros.』の人気連載を単行本化。さすがは岡村ちゃんだけあって人選がかなり異色である上、各インタビューの分量も多く、読み応えのある本です。驚くのは、聴き手側の博学さと聡明さ、そして質問の深さと的確さ。私は学生時代から岡村靖幸の大ファンなのですが、こんな知的な人だとは思っていなかったので、本書で新たな一面を垣間みた印象です。どこか批評家的な視点もあったりする点は、NHKで音楽番組を持っていた佐野元春とも共通します。 私は学生時代(90年代)にCD・ビデオのレンタルショップでアルバイトをしていたのですが、音楽好き、映画好きのサブカル少年少女が多く働いていたその店では、岡村ちゃんのアルバムが店内でヘビー・ローテーションされていて、てっきり私は日本中で大流行しているものと思っていました。実は、どちらかというとマニアックな音楽好きの間で聴かれていた事を後で知りましたが、本書を読んでいると、業界にも岡村ファンの人が結構いる事が分かります。 前半は下ネタも多く、ラジオ番組的なノリもある対談集ですが、ホドロフスキー監督との深い対話もあったりして侮れません。特に素晴らしいのが、岡村氏本人も述べている通り、矢野顕子、大貫妙子との対談。音楽ファン垂涎の興味深い裏話の他にも、人間としての深い部分に触れるような、秀逸な言葉の応酬があって、単なる対談集には留まりません。 |