“目からウロコの議論も飛び出す、映像メディアの才人二人による対談本”

マジック・ランチャー』 (デジタルハリウッド出版局)

 庵野秀明×岩井俊二

 本書は『making of ACTUAL-MEDIA』と銘打たれたシリーズの一環という事で、特に“表現者”に向けての企画である事が強調されていますが、他にどんな本が刊行されているのか、残念ながら私はよく知りません。今回の対談者は、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で時の人となり、実写映画『ラブ&ポップ』でも話題を集めた庵野秀明監督と、『スワロウテイル』『Love Letter』『リリィ・シュシュのすべて』などで独自の映像世界を展開する岩井俊二監督。

 私はアニメの世界に疎いので、庵野作品は全く見た事がないのですが、岩井俊二に関してはTVドラマ時代の作品も含め、恐らく全作品を観ているほどのファンです。本書は、お互いの創作手法や、製作の舞台裏話など、やはり創作に関する話題が中心になっていますが、私が特に面白いと思ったのは、クリエイターから見た映画評論家について言及されている箇所で、ここは、評論家という人達の本質をかなり鋭く衝いているのではないかと思います。

 つまり、映画評論家の作品分析は圧倒的に言語中心で、基本的にみんな映画を文学のように捉えている、と。彼らは恐らく、学生時代に現代国語が図抜けて得意だった人達じゃないかという事で、実際に岩井俊二が訊いてみた所、やはり大方その通りだったという。やたらと難解で、その割には教えられる所の少ない評論をたくさん読んでくると、こういう指摘は、確かに的を得ているように思えますよね。正論かも。

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