1995年1月17日、神戸から大阪方面に伸びる阪神間という地域を、未曾有の大地震が襲いました。私もこの地域に住んでいたので、軽度ながら被災しましたが、特に若者達や観光客の間で人気があった神戸の街は、徹底的に破壊され、ほとんど廃墟と化してしまいました。その壊滅状態から、神戸の街はいかにして復興し、変貌を遂げてきたのか。この本は、大型カメラによる市内60カ所にも及ぶ定点観測によって、街の変化を追っています。 大阪出身の写真家、熊谷武二は、かつて自分が歩き回った神戸の街の無惨な姿を見て、あまりの悲しみに涙をこぼしながら、この街が元の姿に戻るまで写真に記録しようと決意したといいます。阪急電車の駅ビルやセンター街など中心地の繁華街は勿論ですが、倒壊した阪神高速道路やメリケンパークなど象徴的な場所、教会や幼稚園、工場、市場などの生活に密着した場所も観測地に選ばれています。こうやって、逞しく復興してゆく神戸の街の姿を見ていると、思わず胸の奥から熱いものがこみあげてきますが、特に印象的なのが、最後の神戸平安幼稚園の写真。この幼稚園は、教会も園舎も倒壊し、一時は閉園が決まったものの、全国からの励ましに応えて1997年に再園しました。ここに見る写真の中では、園児達が倒壊した建物の前で卒園式を行い、かつての園児が結婚式を挙げ、一番最後は、新しくここで生活をスタートさせる園児と先生達の入園式の写真で終わっています。 尚、妹尾河童によるエッセイは、自身の過去に絡めて神戸という街について語られた、内容的には素晴らしいものですが、分量から言えばほんの5ページほどのもので、写真家と並列に著者として記されているのには、多少疑問を感じないでもありません。第2回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」写真賞受賞作。 |