“ハバロフスク、ウラジオストク‥‥東野翠れんロシアを旅するの巻”

ホンマタカシ写真集 アムール 翠れん』 (プチグラパブリッシング)

 写真:ホンマタカシ モデル・日記:東野翠れん

 別の欄でご紹介した『日常写真』、あれはロシアの手動カメラ、LOMOやHOLGAを使った写真集でしたが、そういうカメラの何がウケているかというと、やっぱりあの“ユルさ”ですよね。ちゃんと写らないのに、それが味だ、みたいなユル〜イ感覚。そこに、何か癒される感覚やノスタルジックな懐かしさを感じる人が多いわけです。で、この写真集、別にLOMOやHOLGAを使っているわけではありませんが、何がユルイと言って、モデルの東野翠れん(この人自身も写真家として本を出してます)のポワ〜ンとした雰囲気と、ロケ地のハバロフスク、ウラジオストクのいかにも旧ソ連っぽい雰囲気に尽きます。どちらも、新潟からフェリーに乗って行けるくらいの近場ですが、れっきとしたロシアです。

 写真を見ても、街の空気感みたいなものは完全にロシア。それも、モスクワやサンクトペテルブルグのような近代化にはまだ遠いような、朴訥で、アナログ風情全開のロシア。それが、この写真集の最大の魅力です。バリバリのファッションモデルがパリで撮りました、みたいなとんがった感じではなくて、全体にまったりとしてユル〜イのです。ホンマタカシは別の欄でご紹介した『In-between』シリーズにも参加していますが、この人は参加している写真家達の中で、個人的に最も好印象を持った一人でした。

 最後にモデルさん直筆の日記が数ページに渡って掲載されていますが、これが又ユルイ! さすがです。装丁のデザインもなかなかイケてますが、カバーを取ると赤地に白の水玉柄でさらにお洒落である事が判明。先日、北海道旅行の際に札幌のヴィレッジ・ヴァンガードに立ち寄りましたが、ここでもこの本を、カバーなしの剥き出し状態で陳列していました。

 ちなみに、プチグラパブリッシングはなかなか目が離せない出版社です。イジー・トゥルンカやスティグ・リンドベリの絵本、『あたらしい教科書』シリーズ、『アメリ』や『チェブラーシカ』の企画本など、これはと思って手に取った本がプチグラの本だった、という経験がかなりの確率であります。今後も注目してゆきたいと思っております。

*   *   *

 

Home  Top