“白洲正子からシャーリー・マクレーンまで、生物学者ワトソン博士が挑む対談集”

『ロスト・クレイドル ライアル・ワトソン対論集』(筑摩書房)

 監訳:内田美恵 

 ライアル・ワトソン×

 河合隼雄、坂田俊文、青柳昌宏、中沢新一、秋月龍民、栗本慎一郎、

 中上健次、水口博也、白洲正子、シャーリー・マクレーン

 別欄でもご紹介した生物学者ライアル・ワトソンによる対談集。河合隼雄や中沢新一といった、対談ではよく名前を見かける顔ぶれも入っていますが、面白いのは、最後に一章を設けてあるシャーリー・マクレーンとの対話。言うまでもなく彼女は、ビリー・ワイルダーやヒッチコックの映画でお馴染みのハリウッド女優ですが、前世などに関する本で大々的なベストセラーを出した事でも有名です。私なども、女優さんとしての彼女は大好きですが、前世関係の著作に関しては何となくうさん臭さを感じていたものでした。

 しかし、東京で行われた歌手としての来日公演直後、二人の大好物(ワトソンは、生涯最後の食事は絶対に寿司にしたいそうです!)だという寿司屋で行われたこの対談を読んでいると、私のような偏見に満ちた狭量な見方も踏まえた上で、それを軽く飛び越え、前世についてよく理解したおかげで、自分は全てにおいて前向きに生きられる、創造的でいられると宣言している所、実に爽やかで、輝いて見えます。又、さすがのワトソン博士も、彼女の前では、単なる一ファンとしての歓喜に身悶えしている一面が窺えて、微笑ましかったりします。

 他では、日本文化の特性について語り合った白洲正子との対談も面白いです。一時話題を呼んだ、大相撲ロンドン場所をプロデュースしたのは実はワトソン博士で、その顛末記も一章を設けて、これ又いつもの彼らしからぬ興奮気味の文章で詳細に報告されていますが、白洲正子との対談にもその話が出てきます。勿論、栗本慎一郎との、人類のルーツがアフリカにあるという話や、捕鯨問題など、ワトソン的話題も満載。特に、河合隼雄や坂田俊文との対談にある、地球環境の危機への言及は、尋常でないほど切迫感があって、読んでいて恐ろしくなるくらい。

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