“人気アーティスト達による、トイカメラを使用した遊び心溢れる写真集”

日常生活−写真の日々、日々の写真。』 (日本カメラ社)

 写真:石井克人、今井智己、操上和美、groovisions、佐内正史、鈴木清順、瀧本幹也、奈良美智、野口里佳、野村浩司、花代、平間至、ヒロ杉山、Frederic Lebain、MOTOKO、森山大道

 皆さんはロシア製のコンパクトカメラ、LOMOをご存知でしょうか? 性能が悪いという事でいったん生産中止になりながら、たまたまデッドストックを手にした若者達の間で火が付き、日本にもファンの支部が出来て、通販で入手できるようになった、いわくつきのカメラです。今では雑貨屋さんなどでもよく売っていますね。で、このカメラの何がそんなに魅力的なのかというと、どう映るのかが予測不能なのです。露出やピント設定が手動操作というせいもありますが、レンズが歪んでいたり、光が漏れてしまったりと、基本性能がアバウトなせいで、ちゃんとセッティングしてもうまく映らなかったりするのです。で、どうしてそんな面倒臭くて頼りにならないカメラが人気なのかというと、その、うまく映らなかった写真に、何とも言えない味わいがあるからなのです。いや、調子良く映っていても、発色や描写が独特で、今撮ったばかりの写真なのに、どことなく、子供の頃の古い写真のような、なんともレトロで懐かしい感じの写真に映っていたりします。これがオシャレでアーティスティックだというので、密かなブームとなったわけです。

 この写真集は、そのLOMOの代表格LC-Aを筆頭に、似た理由で人気のあるポラロイドカメラのHOLGAや、4分割写真が撮れるSuper Samplerなどのトイ・カメラを使って、16名の写真家やアーティストが撮った作品を集めたものです。『鮫肌男と桃尻女』の石井克人や『ツィゴイネルワイゼン』の鈴木清順など、映画監督も参加しています。アプローチこそ様々ですが、単に面白いというのみならず、やはり、見ていると何となしに胸がキュンとなるような、ノスタルジックな空気が伝わってきたりします。私などは、子供時代をふと回想したりする時、確かにこういう光や色合いで回想しているような気もします。

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