“創作論と超常現象の話が満載のぶっとんだ対談集”

『見えるものと観えないもの 横尾忠則対話録』(ちくま文庫)

 横尾忠則

 ×淀川長治(映画評論家) ×吉本ばなな(作家)

 ×中沢新一(宗教人類学者) ×栗本慎一郎(経済人類学者)

 ×河合隼雄(臨床心理学者) ×荒俣宏(作家)

 ×草間弥生(美術家) ×梅原猛(作家)

 ×島田雅彦(作家) ×天野祐吉(編集者・児童文学者)

 ×黒澤明(映画監督)

 アーティスト、横尾忠則が雑誌などで様々な分野の人達と対談したものを集めた本ですが、対談の中に出て来る話題とホストの発言が全編に渡って強力に統一されているという、独特の対談集です。特に、宇宙人や心霊体験の話がごく当たり前のように飛び出し、ほとんどの対談相手がそれに対してごく普通に反応している所、ついていけないものを感じる読者も多いかもしれません。少なくとも、そういう世界を頭から否定する人には、本書はお薦めできません。

 冒頭の、淀川長治との対談にしてからが話者のキャラクターとも相まって強烈ですが、横尾忠則の基本的な考え方は、20世紀以降の、知性を使って作り上げたような芸術というのはもう全部ダメで、人間の根源的な力やイメージがそのまま形になって出て来たものこそが重要である、という態度で一貫しています。芸術は知的である必要など全然ない、子供が見ても何かを感じ取れるものが芸術であると。それで、例えば夢で見るイメージとか、もっと踏み込んで言えば、“あちらの世界”から送られてくるメッセージみたいなもの(こういう概念が嫌な人は、単に“インスピレーション”と解釈なさればいいでしょう)が重視されてきて、対談も自然とそちらの話題に移ってゆくわけです。

 対談相手の中で唯一、前衛アーティストの草間弥生(漢字が難しいためこの字体で失礼)は不快感を露にし、これ以上対談を続けられない旨を申し出たりしてなかなかスリル満点ですが、横尾氏が反論しているようにこの人、自分の過去の栄光をつらつら自慢しているだけで、全く対談を成立させていません。その意味でも、後半の横尾氏の反撃は胸がすくように爽快。

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