新旧日本映画界を代表する二人の映画作家、黒澤明と宮崎駿。一見全く違った世界に身を置く二人の、違い、共通点。まさに奇跡の顔合わせが実現した、映画ファンにとってはたまらない一冊です。黒澤明は、よく他のインタビューやドキュメンタリーで見る通りのマイペースな感じなのですが、対する宮崎駿が、別にへりくだるでもなく、虚勢を張るでもなく、好ましい自然体で対話を繰り広げているのが興味深い所です。それは、より彼の姿勢や考え方が強く現れた、対談終了後のインタビューを読むと分かる通り、彼が黒澤明を、まだ現役の、自分と同じ舞台の上に立っている同業者として捉えているからかもしれません。 話題は『七人の侍』と『まあだだよ』がテーマという事になっていますが、他の映画についての話もちょくちょく入ってきます。もっとも、話題が美術やロケ撮影、絵コンテの方に傾きがちなのは、この二人らしい所でしょうか。写真も豊富なので、本文の参考になります。最初の数ページが完全に日常会話なのも面白い所。この本を作った人は、対談前の二人の会話から全部入れたいと思ったんでしょうね。ただ、最後に入っている、『七人の侍』の助監督・広澤榮のエッセイは他の書物から抜粋したもので、いいエッセイなのですが、配置としてはちょっと唐突な感じを受けます。 |