対談の名手でもある臨床心理学者、河合隼雄と作家・吉本ばななによる対談集。河合隼雄が関わる対談本は当コーナーでもよく取り上げていますが、本書が他と少し違うのは、どことなく吉本ばななの側がカウセリングを受けているような雰囲気がある事です。それは勿論、若い作家の河合隼雄に対する敬意ゆえかもしれませんが、話題も、吉本ばななの幼年時代や家族の話がよく出てきて、そこから問題提起するような体裁になっています。 特に大きく取り上げられているのは、まず若者の事。これは、吉本ばななが若い世代の人に接触する事が多く、そこから得た印象が話されているのですが、それが一般的な社会通念と一致する部分もあれば、意外な見方もあったりして、さすが作家らしく観察眼が鋭い感じがします。そこから、社会全体の問題や、日本人の性質の問題などにもテーマが飛び、国際的に活動している二人ならではの議論が展開。社会の圧力、しがらみについてや、クリエイティビティのついての話には、なるほどと腑に落ちる人も多いかもしれません。勿論、創作についての話も出ますので、作家のファンにとっても興味深い対談だと言えるでしょう。個別のコメントや往復書簡も収録。 |