“手頃なサイズ、分量で、安藤建築のミュージアムを多数紹介”

『安藤忠雄の美術館・博物館』 (美術出版社)

 先日、文化勲章を受賞した大阪出身の建築家、安藤忠雄。コンクリートの打ちっぱなしを基調にした彼の建築デザインは、好きか嫌いかを越えて、もう既に私達の目に馴染んでしまった印象があります。それは、あちこちで亜流を目にする機会が多いせいもあるのでしょうが、関西人である私にとっては、天保山のサントリー・ミュージアムや宝塚温泉、兵庫県立美術館、京都府立陶版名画の庭、六甲の集合住宅、西宮市貝類館など、実際に日常の風景の中に存在していて、中に入った事もある建物が多いからかもしれません。

 本書は、彼が設計した美術館や博物館をピックアップし、カラー写真やスケッチ、模型やドローイングなど、多方面からその仕事に迫る本。安藤忠雄も他の建築家の例にもれず、気軽に購入できてビギナーにもとっつきやすいビジュアル本がなかなかないですが、本書はサイズも厚みも手頃だし、本格的な分析や建築家本人のコメント、対談も収録していて、ある程度建築に詳しい人のニーズにも応える本です。島全体がアートのコンセプトで貫かれた直島の特集もありますし、展覧会のインスタレーションや、実現はしなかったものの海外のコンペに応募した建築のスケッチ、模型も多数紹介されています。

 あくまでミュージアムに絞られているので、彼の名を一躍有名にした住吉の長屋や、教会の数々が紹介されないのは致し方ない所ですが、とりあえず安藤建築がどんなものか見てみたいという人にはぴったりの本かもしれません。

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