ある建築家についてその仕事を総括的に知りたいと思った時、書店で色々探してみてもビギナーにぴったりな本というのはなかなか見つからないものです。大抵は分厚くて巨大で、おまけに高価な本だったり、文章ばっかだったり、写真入りでもモノクロページばかりだとか。手頃で、カラーで、写真が多く、分かりやすい、そんな本にはなかなかお目にかかりません。スイスの有名な建築家コルビュジエに関しても、やはりそんな感じでした。 時に、ムック本というのはそういったニーズにがっちり応えてくれる事があるもので、本書も私にとってはその一冊。カーサ・ブルータスに掲載されたコルビュジエ関係の記事をまとめ、修正・加筆・記事追加を行って再編集したムックですが、オールカラーで写真も豊富、様々な角度からコルビュジエの仕事に光を当てた、ビギナーには願ったり叶ったりの内容です。 例えば、彼の仕事を支えた二人の女性デザイナーについてとか、家具デザインの仕事についてとか、国連本部ビルのエピソードやインドでの仕事、今はなき渋谷・東急文化会館の緞帳についてとか。そして勿論、代表作サヴォア邸や小さな家、マルセイユの集合住宅、ロンシャンの礼拝堂、ラ・トゥーレット修道院、フィルミニの教会など、主要な仕事は豊富な写真と分かりやすい解説できっちり紹介されています。専門書だとこうはいきません。ムック万歳! もう少し踏み込んだ内容でも大丈夫、という人にはエクスナレッジムック(これもまあムックなんですが・・・)の『ル・コルビュジエ 建築・家具・人間・旅の全記録』をお薦めします。これは建築好きだった妻が独身時代から持っていた本で、文章が中心でビギナーの私には難しい部分もありますが、上記の内三つの宗教建築については大判のカラー写真でたっぷり紹介。全仕事を年表でフォローしていて、データ的にも完備した本です。 |