こういうアルバムは、今では本当に希少になってしまいました。ブルックナーやマーラーなどの大作が人気を得るにつれ、その昔、カラヤンやバーンスタインが録音していたような小品集やオムニバスは、どんどん発売されなくなりました。メジャー指揮者によるスッペやヴェルディの序曲集なんて、最後に発売されたのは一体いつの事でしょう? ただでさえ珍しいスッペの序曲集、もしかするとこのメータ盤が最後だったのかもしれません。又、このコンビによるソニーへの録音も、確か他にはなかったのではないかと記憶します。 なんだメータなんてとおっしゃるなかれ。ウィーンで音楽の素養を身に付け、ウィーン・フィルを振っているこのアルバムでの彼は、何と楽しそうに、生き生きと振る舞っている事でしょうか。殊に、よく弾む歯切れの良いリズムをいささかも力まず刻んでゆく、その軽妙な足取りには、メータという指揮者のイメージを一変させかねないほどの洗練された味わいがあります。私自身は、大好きな《詩人と農夫》や有名な《軽騎兵》を除いて、いかにもウィーン風のオペレッタといった感じの曲が続くのに少々疲れてしまう時もありますが、毎年ニューイヤー・コンサートを鑑賞するようなリスナーであれば、そこは何の問題もないでしょう。 |