“自然の神秘と英国情緒に溢れる、ヴォーン・ウィリアムズの魅力的な世界”

ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲第7番《南極交響曲》、第3番《田園交響曲》

 アンドリュー・デイヴィス指揮 BBC交響楽団

(録音:1996年  レーベル:ワーナーミュージック)

 ヴォーン・ウィリアムズのシンフォニーというのは、今、どのくらい聴かれているのでしょう? 少なくとも80年代初頭には、アンドレ・プレヴィンやエイドリアン・ボールトのレコードをよく見かけたように思うのですが、単に私が気に入ってよく聴いていただけで、世間一般にはマイナーな曲目だったのかもしれません。しかしRCAレーベルは夏の時期になるとよく、プレヴィンの《南極交響曲》《海の交響曲》(これもヴォーン・ウィリアムズ)と、ケンペ&ロイヤル・フィルの《アルプス交響曲》を、“涼風を呼ぶ三大シンフォニー”などと銘打って再発売していたものです。

 映画『南極のスコット』の音楽を交響曲として構成した《南極交響曲》は、小学生時代の私にとってお気に入りの作品の一つでした。今の耳できくと、いかにも映画音楽風に感じられる箇所も少なくありませんが、神秘的、魅力的な楽想が次々に現れる第1楽章、ユーモラスな風情もある第2楽章、時が止まったかのような荒涼たる大自然の描写に畏怖の念すら覚える第3楽章、一転して人生の秋を思わせる寂寥感の漂う第4楽章、冒頭の主題が回帰するフィナーレと、充実した内容になっています。イギリス民謡風の音階や、ホルストの《惑星》と共通する音世界が頻出するのも面白い所。

 《田園》シンフォニーの方は、これも民謡風の五音階を多用した美しい曲で、当時の私はその世界に浸るのが好きでした。プレヴィン盤のジャケットも、英国ののどかな丘陵の写真を使っていて、これも音楽の雰囲気にぴったりでしたが、作曲者によれば、従軍中に訪れたベルギー、フランドル地方の印象を音にしたとの事で、戦時の牧歌的風景というコンセプトで書かれているそうです。そう言えば作品中に、夕暮れ時を思わせる静けさの中、遠くからラッパやソプラノの声が響いてくる箇所がありますが、これが又、大変に魅力的な音楽になっています。マーラーやブルックナー、チャイコフスキーに食傷気味の交響曲ファンにはお勧めの2曲と言えるでしょう。

 これらの作品をアンドリュー・デイヴィスの演奏できける事は、私にとって大きな喜びです。彼は大好きな指揮者ですから。ヴォーン・ウィリアムズのディスクは、ほとんど全てが英国勢のアーティストによるものですが、ハイティンクやスラットキンなど外国の指揮者までがロンドンのオーケストラとレコーディングしていて、一度、英国以外のオーケストラで聴いてみたい気がしないでもありません。当ディスクも英国の指揮者、英国のオケによる録音ですが、アンドリュー・デイヴィスは、彼の美点とも言える暖かみのあるサウンドによって、寒色系に傾きがちな英国音楽に新たな魅力を加えています。

●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●

 

Home  Top