デ・ワールトがまだ新進の若手指揮者だった頃、最初に注目されたのがモーツァルトのレコーディングだったと聞いています。勿論彼は、今でもモーツァルトを振っていますし、96年のザルツブルグ音楽祭では歌劇《フィガロの結婚》の香り高い演奏で大きな評判を呼びましたが、この録音にきかれる若々しい表現には格別な魅力があります。ドレスデン・シュターツカペレは本来もっと重厚な響きの団体だと思いますが、デ・ワールトは無類に瑞々しいフレージングと軽快なテンポを駆使し、いぶし銀と言われたドレスデンのサウンドを自分流に消化して、モーツァルトの光と陰を爽やかに描いてみせます。名手ペーター・ダム(このオケの首席奏者)のホルンも聴きどころ。ちなみに当ディスクでは、楽団の入場・退場の音楽として当時は慣例的に演奏されたと推定される、K.320の行進曲を前後に加えています。 デ・ワールトは同じオケと《ハフナー・セレナード》も録音していますが、当盤も含めて国内盤・外盤共に入手困難のようです。中古屋さんを探すか、再発売を待つしかないでしょう。しかし彼は又、オランダ管楽アンサンブルと《グラン・パルティータ》をはじめとする管楽セレナードも録音していて、こちらはまだ入手できるようです(*下記リンクはこちらの方のディスクなのでご注意願います)。どれも、ナイーヴで颯爽とした、魅力的な演奏。 |