私はバッハより古い時代の音楽には全く疎い方で、シャルパンティエの作品自体、聴くのは当盤が初めてだったのですが、《真夜中のミサ曲》はフランス・バロックのクリスマス音楽最高傑作と称されているそうです。特にユニークなのが構成。ミサですから、キリエ、グローリア、クレド等々という通常のミサの式文を歌詞にしている所まではいいのですが、さらに10曲のノエル(クリスマス民謡)のメロディを素材に盛り込む事で、宗教音楽と世俗の大衆音楽の融合を図っているのです。まあノエルといっても17世紀の音楽ですから、現代人の耳にはやはりバロック音楽の一種にしか聴こえないかもしれませんが、これは大変面白いアイデアですね。4声の独唱とリコーダー、弦楽で演奏されるこのミサ曲、心が洗われるように清らかで美しい作品です。 同時収録されている《主の降誕祭のカンティクム》はキリスト降誕を描いたオラトリオで、これも非常に美しい曲。演奏しているレザール・フロリサン(『花咲ける芸術』という意味)は、正にシャルパンティエの作品名に由来するグループで、創立者のクリスティはアメリカ人ですがフランス人中心の団体です。このグループは又、今をときめく古楽アーティストの多く(ドミニク・ヴィス、マルク・ミンコフスキ、寺神戸亮、ヒロ・クロサキなど)がかつて在籍していた事でも有名。現代的にショーアップされたクリスマスではなく、もっと静かにクリスマスを祝いたいという向きにはこのアルバム、特にお薦めです。 |