《三文オペラ》や《七つの大罪》など、劇音楽のイメージが強いクルト・ヴァイルの純音楽作品を、話題の才人ヤンソンスがベルリン・フィルと録音した興味深いアルバム。コンチェルトではツィンマーマンがヴァイオリンを受け持っているのも注目です。 ヴァイルは個人的にも大好きな作曲家で、二曲ある交響曲の両方を、エド・デ・ワールト指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のフィリップス盤で長らく愛聴してきましたが、このヤンソンス盤は、この交響曲のイメージをほとんど覆してしまうほどの驚異的な名演と感じました。この、無尽蔵に才能を発揮しつづける俊英指揮者は、ヴァイルのシンフォニーの隠れた魅力までも、あます所なく拾い上げています。ちょっと劇音楽のような、《七つの大罪》に通ずる雰囲気もあるメロディアスな交響曲と打って変わって、ヴァイオリン協奏曲の方は、一切の情緒を排した硬質な音世界。ヒンデミット辺りの即物的な乾いた不協和音を想像してもらえると分かりやすいでしょうか。ヴァイルのファンとしては「ちょっとこれは‥‥」という感じもしますが、その後に収録されている《マハゴニー家の興亡》で、ヴァイルの本領たる劇音楽の世界を堪能できるので、アルバム全体の統一感は保たれていると言えるでしょう。ちなみに当盤での作曲家の表記は“ワイル”となっています。日本盤は既に中古でしか入手できないようなので、下記に輸入盤のリンクも貼っておきました。 |