金聖響はザ・シンフォニーホールを中心に、毎年ユニークなシリーズ企画を立てているが、これもいたみホールと共同の面白い企画。バッハの管弦楽組曲とヴィヴァルディの《四季》を二回に分割して半分ずつ演奏するというプログラムで、11月に後半の演奏会がある。これらの曲は、有名なアーティストの演奏でまとめて聴く機会に案外恵まれないので、金聖響のような気鋭の指揮者が取り上げてくれるのは大歓迎。それに、指揮者にとってもオケにとっても、この時代の音楽を集中的に取り上げる事は勉強になるんじゃないかと思う。 席種は二種類だけで、安い方の当日券を買ったら最前列の端っこが空いていた。大ホールといっても、いたみホールの場合は大きめの中ホールくらいの規模。オケが小編成なので、中央に陣取ったオケを背後から盗み見るような位置。道理で安いわけだ。それでも指揮者や楽員は間近に見られるし、指揮者が右手を向くたびに、こちらからはほぼ正面に表情を垣間見る事が出来る。楽員が入場してくると、みんななぜか半笑いの表情。指揮者が入ってくると、彼も半笑い。オケに向き直った後もまだ笑顔だった。 曲がもともと指揮者の影響を大きく受ける作品ではないので、細かい事を気にせず楽しく聴いたが、演奏者のスタンスも、指揮者とオケというより、アンサンブルとそのリーダーといった雰囲気。強いていえば、バッハは流麗な線を描く柔和な演奏、《四季》は早めのテンポで激しい表現といった印象。ソロは昨年からセンチュリーのコンサートマスターを務める川崎洋介、ホルンの二人もセンチュリーの首席奏者で、どことなくリラックスした雰囲気もあって、休みの日に趣味で演奏してみましたというくつろいだ感じ。ホルンのコンチェルトにはブラヴォーの声が飛んだ。最近の指揮者は大曲志向で、構えて聴かなければならないプログラムが多いので、こういう楽しいコンサートはどんどん実現して欲しい。アンコールはなし。 |