フンパーディンク/歌劇《ヘンゼルとグレーテル》全3幕

渡辺玲美、新垣有希子、清水宏樹、野上貴子

井上美和、田子真由美、佐藤路子

佐渡裕 指揮

兵庫芸術文化センター管弦楽団、西宮少年合唱団

安田バレエスクール

演出:鈴木敬介

2007年12月24日 西宮、兵庫県立芸術文化センター大ホール

 二年前のクリスマス、このホールが出来たばかりの頃に上演されたオペラだが、残念ながら行けなくて悔しい思いをした。早くも再演という事で喜んでいたら、何と佐渡裕は二年ごとにこの作品を上演して、阪神地区クリスマスの風物詩にする考えだという。素晴らしいアイデアだ。佐渡裕はテレビでもしょっちゅう見かけるのでよく知っている気になっていたが、実は生演奏を聴くのは今回が初めて。席は二階のサイド列で、オーケストラ・ピットの中もよく見えるし、舞台もほぼ全体が見渡せて、オペラには最適なポジションじゃないかと思う。

 オペラは嫌いではないが、好きな作品が極端に少ない。そんな中で、かなり好きな方に入るのがこの《ヘンゼルとグレーテル》。民謡風のメロディが多くてロマンティックな風情もあるし、ちょこっとしか現れないフレーズに素敵な旋律が当てられていたりして、なかなか侮れない。ディスクはクリュイタンス/ウィーン・フィルによる古い録音と、テイト/バイエルン放送響の二組を持っているが、前者は名門ウィーン少年合唱団が参加、後者はバーバラ・ボニーとフォン・オッターが主役を務める豪華キャスト陣と、どちらにも捨て難い味わいがある。

 演出も、変に気取ってモダンな解釈を施したりせず、あくまでメルヘンチックで楽しい雰囲気。まず、序曲がいい。三々五々と子供達が集まって、巨大な本を引っ張り出してきたかと思うと、ヘンゼルとグレーテルも登場、皆が見守る中、本が割れて物語が始まる。他にも、子供達のバレエがあったり、そこいらの岩々に顔の形が浮かび上がったり、光る粉(紙片?)が降ってきたり、暖炉から本物の炎が飛び出したり、視覚的にもひたすらエンターティメントを追求している。それでいてディズニーみたいな華やかさに傾かず、上品。

 主演の二人は、声がオケの響きに埋もれがちだが、踊り付きの歌などミュージカル風の身体の使い方がなかなか決まっていて、いかにも現代っ子らしい。上手いと思ったのは、お父さん役の清水宏樹(深々としたエエ声!)、魔女の井上美和、そして露の精の佐藤路子。特に露の精はかなり声量があって声質も美しく、個人的には本日の出演者中トップクラスの実力とお見受けしたが、カーテンコールでブラヴォーの声援を浴びたのは、やっぱりお父さんと主役の二人。アンコールでお客さんに振りを教えて一緒に踊るとか、佐渡裕がサンタの衣装で現れてオケの楽員も皆ステージに上げるとか、彼らしいサービス精神が満載。出演者とオケ全員から客席に向かって叫ばれた「メリー・クリスマス!」のかけ声には、何だかすごく感動してしまった。佐渡裕、いい仕事してるなあ。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 オペラを見たことない人や子供達にも楽しんでもらおう、という佐渡さんの熱い思いがいっぱいつまった舞台。地元の合唱団の子供達や安田バレエスクールの子供達が出て来る場面がいくつかあり、出演している子供達にも、それを見ている同世代の子供達にも、とても良い経験となっているんだろうな。オープニングの、子供達が舞台のあちこちから集まってくる場面も良かったし、霧の精と子供達が一緒にバレエを踊る所も良かった! とてもあったかい気持ちになれる素敵な舞台でした。

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