佐渡裕 指揮

兵庫芸術文化センター管弦楽団

神戸市混声合唱団

曲目

フォーレ/レクイエム

フランセ/木管楽器のための四重協奏曲

ラヴェル/バレエ《ダフニスとクロエ》第2組曲

西尾知里(ソプラノ)、キュウ・ウォン・ハン(バリトン)

ザビエル・ラック(フルート) マシュー・テイラー(ファゴット)

藤井貴宏(オーボエ) ロバート・ボルショス(クラリネット)

2008年4月12日 西宮、兵庫県立芸術文化センター大ホール

 前日のナガノ/モントリオール響に続いて二日連続のフランス音楽。フォーレのレクイエムが入っている演奏会は出来るだけ聴きたいので、プログラムを見てすぐに予約した。ちなみに、ラヴェルの《ダフニスとクロエ》も生演奏で聴くのは初めて。開演前、佐渡裕がステージに登場し、曲目や出演者について簡単な解説。楽しいパンフレットともども、親しみやすい趣向でとてもいいと思う。

 フォーレは、細部まで心のこもった素晴らしい演奏。神戸市混声合唱団はこの曲を大切にしているというだけあって、入魂のコーラスで感動させてくれる。この地で、地元の団体がこういう曲を演奏する事には大きな意味がある。有名な曲でも、芸術的によく出来ていても、レクイエムはやっぱり鎮魂曲。震災でたくさんの人々が亡くなった、その場所に建ったホールだからこそ、定期的にレクイエムを演奏して欲しい。佐渡裕の古い友人で、彼が指揮する年末第九コンサートでも歌っているというキュウ・ウォン・ハンは、普段はキュウちゃんと呼んでいるとの事。野太い声で堂々たる歌唱。一方ソプラノの女の子は、何と13歳で抜擢。技術的な巧拙は別として、健気な歌い方が清々しくて曲にぴったり。それにしてもこの曲は、何度聴いても胸を打たれる。不朽の名作だと思う。

 後半は、首席木管奏者四人がソロで競演するフランセのコンチェルト。初めて耳にする曲だが、やっぱりミヨーとかプーランクあたりを彷彿させる近代フランス音楽といった趣で、ジャズの要素もあり。そして、短い。最後はラヴェル。《ダフニスとクロエ》は、私としては圧倒的に全曲版が好きだが、どういうわけかこの第2組曲だけが人気。せっかくコーラス付きなんだから全曲を聴きたかったけど、全曲を演奏したコンサートというのは全く話に聞かないから不思議だ。

 センターのオケは実に優秀。音色的な魅力に関してはまだよく分からないが、ミスはほとんどしないし、表現力も驚くほど多彩である。日本各地のプロ団体の多くは、残念ながらこの域に達していないかも。そして、佐渡裕の指揮ぶりを見ていていると、やっぱりこの人はバーンスタインの弟子なんだなあと痛感する。グルーヴ感が独特である。アンコールはベルリオーズのハンガリー行進曲。最後までフランス一色だった。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 『題名のない音楽会』の司会を始められた佐渡さん。今回も演奏前に一人ステージに現れ、司会者のように曲の説明などをされていた。佐渡さんがいつも伝えようとされているメッセージ、音楽の楽しみをたくさんの人に知ってもらいたい、という思いだとか、人柄だとか、そういう熱いものがぶわ〜っと感じられて、佐渡さんの姿を見ただけで、なんとなく涙がこみ上げてきた。

 震災の後、このホールが作られ、神戸の街がここまで復興してきたこと、神戸市混声合唱団にとってもフォーレのレクイエムは大切な曲であること、佐渡さんがオーディションで13歳の女の子をソプラノに抜擢したこと、など、色んなことが感動的なステージだった。13歳の女の子の、純真な心が伝わってくるような歌声がとても良かった。

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