プッチーニ/歌劇《トゥーランドット》全3幕

エレーナ・バラモヴァ  ミロスラフ・アンドレエフ

佐藤しのぶ  アンゲル・フリストフ

コスタディン・アンドレエフ  アレクサンドル・クルーネフ

オルリン・ゴラノフ  モミチル・カライヴァノフ

ストイル・ゲオルギエフ

ボリス・スパソフ 指揮

ソフィア国立歌劇場管弦楽団・合唱団

演出:プラーメン・カルターロフ

2008年10月25日 西宮、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

 知らぬ間に大ホールの名前が変わっていた。ホールや球場にスポンサーの名前を冠するのは最近の流行らしいが、成功していると伝え聞くこのホールも、新しいスポンサーの援助が必要になったのか、それとも最初からスポンサーだったのか…。海外オペラハウスの引っ越し公演は初体験。ブルガリアの歌劇場なんてテレビでもCDでも聴いた事がないけれど、チラシによれば1890年に創立、人気歌手ヴェッセリーナ・カサロヴァを輩出した他、ニコライ・ギャウロフやゲーナ・ディミトローヴァ、アンナ・トモワ=シントウらもここの舞台で第一歩を踏み出したそうだから、由緒正しい劇場なのだろう。何はともあれ、有名な歌劇場の来日公演はとんでもないチケット代を取るので、行きたくても行けないのが実情。

 歴史のある劇場という事で期待して臨んだが、まず演出に疑問。このオペラは、フランコ・ゼフィレッリが演出したメトロポリタン歌劇場の豪華絢爛な舞台とか、中国の紫禁城で上演されたチャン・イーモウ演出の大規模な公演とか、視覚的スペクタクルに事欠かないステージばかり映像で観ているので、こじんまりした舞台セットだとどうしても見劣りがしてしまう。万里の長城をアニメチックにデフォルメしたみたいな書き割りにいきなり面食らうが、最後まで観ても舞台上のスケールが広がる事はついぞなし。舞台中央の回転ステージも、動く時にぶう〜んと大きな機械音を立て、音楽のピッチと混ざると不協和音になって耳障り。

 セットに奥行きがないのと、合唱の人数が少ないのはチケットが安いので我慢するとして、その少ない群衆にほとんど動きがない上、セットに下がるすだれの背後に回って姿を隠しがちで、迫力に欠けるのは残念。あと、ペルシャの王子が処刑されている後ろで登場するトゥーランドット姫が、赤いボールを投げ上げながら歩いてくるのはどうもピンと来ない。姫が持つ幼児性と冷酷な面を同時に表そうとしたのだろうが、その後に出てくる時は普通の落ち着いた女性に戻っているので、単なる思いつきにしか見えない。ラストの大団円で、主役の二人が舞台の上と下に離れ、それぞれ別の方向にゆっくり歩いているのも、一体どういう表現なのかさっぱり分からず。

 指揮者は職人肌のようで、至って地味な演奏。ドラマティックに強調して欲しいフレーズも淡々と素通りしてゆくので、常に冷静で感情の起伏に乏しく感じられるのが不満。マゼール盤のような凄まじく個性的な演奏と較べるつもりはないのだけれど。オケは優秀なようだが、聞き惚れるというほどでもなく、木琴の音だけが飛び抜けて大きいのも問題。このオペラは、舞台も演奏もスケールの大きさが出ないと駄目だと思う。歌手は皆なかなかのもの。特にカラフとトゥーランドットは豊かな声で安心。ただ、動きにもっと演劇的な身振りがあれば緊迫感が出るのではと思ったりもする。日本を代表して佐藤しのぶがリューで参加。やや金属的な声質と過剰なヴィブラートが私には気になるのだけれど、会場からのブラヴォーは一番多かった。一方、指揮者と演出家にはやはり声援が飛ばなかった様子。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 初めての海外オケでのオペラ鑑賞。今回はブルガリアの歌劇団ということで、チラシにもブルガリア・ヨーグルトが載っていた(協賛が明治乳業)。トゥーランドットの舞台は中国だが、なんとなく衣装や美術など、全体的にベトナムとかその辺の雰囲気が。トゥーランドット姫が、ボールを宙に放り投げながら登場。新体操の国、東欧ならではの演出なのだろうか。おもしろいけど、微妙な感じも。日本人ということで、佐藤しのぶへの拍手がすごかった。舞台装置や衣装が地味な感じだったのがちょっと残念だった

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