マリス・ヤンソンス 指揮 

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

曲目

ドヴォルザーク/交響曲第8番《イギリス》

メンデルスゾーン/交響曲第4番《イタリア》

ラヴェル/ラ・ヴァルス

2008年11月15日 京都コンサートホール

 今年もヤンソンスに会える季節がやってきた。思えば今年で五年目、コンセルトヘボウ管は三回目だ。二年前の京都公演はツアー初日だったせいかミスが多く不調の様子で、会場もマナーが悪くてあまり良い印象がなかった。今回は名誉挽回。オケも指揮者も絶好調で、客席のマナーも良好。

 黄金のコンセルトヘボウ・サウンドは変わらず健在。ドヴォルザークの冒頭から、光沢のある柔らかな響きが満ちあふれる。ドボ8は大好きな曲だが、生で聴くのはこれが初めて。やはりホールの特性か、最初の内は音が舞台の上で完結してしまって、少しこもり気味にも聴こえたが、コンサートマスターが言うようにオケ側の調整機能が働くのか、すぐにホール全体に素晴らしいサウンドが満ち渡る。フルートの首席奏者エミリー・バイノンは毎度ながらすごい存在感。ドボ8ってこんなにフルート・ソロの多い曲だったのね。第1楽章展開部後、木管群の最弱音はデリカシーの極致。すごい。

 ヤンソンス指揮のドボ8はベルリン・フィルを振ったライヴのテレビ放映がとても良かったので期待していたけれど、今回はさらに手の込んだ解釈。第2楽章、木管が牧歌的な旋律を歌う所で、弦の伴奏パターンを均等に刻まず、小節ごとにそれぞれつまづき気味にはじめてアッチェレランドをかけるとか、金管のみが剥き出しになる箇所にティンパニを追加するとか、ベルリンでやっていた独自の演出は今回も踏襲。第2楽章は全体をすこぶる遅いテンポで通し、ほとんどマーラーみたい。第3楽章も、冒頭を最弱音で、かつスローテンポでゆったり始めて旋律を甘美に歌わせる。フィナーレで、変奏曲の旋律が活気を帯びてくる辺りでは、低弦のアクセントがミシミシいったりして迫力の熱演。ヤンソンスの指揮ぶりは素晴らしく、両端楽章の激しいエンディングはさすがの切れ味。

 後半はメンデルスゾーン、ドヴォルザークに較べるとずっと作為のない、自然な表現。このホールは響きが飽和して細部が聴き取りにくいのが難点だが、この曲は爽やかに聴こえていい。躍動感溢れるフィナーレはヤンソンスらしい表現。このコンビでメンデルスゾーンの交響曲全集を録音して欲しい。ラ・ヴァルスは、これだけ全然違うタイプの曲だけど、アンコールを元々組み込んだイメージか。ヤンソンスはこの曲が得意なのか、よく演奏しているみたい。ハープと打楽器奏者が加わって、金管も増えた他、二年前に新世界交響曲の第2楽章で好演したイングリッシュ・ホルンのおばちゃんも登場。結局これ一曲のために京都へやってきた楽員もかなりいる事になるけれど。

 本物のアンコールは一曲だけ、ヨハン・シュトラウス二世のポルカ《ハンガリー万歳》。独特のエキゾティックなメロディ。そういえば、故カルロス・クライバーがニューイヤー・コンサートで演奏してたっけ。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 ヤンソンスとコンセルトヘボウの黄金タッグを、今年も生で味わうことができて幸せ! なぜこんなにも心地よいのか! なぜ全ての音が自然に聴こえるのか? なんというか、音の大きさ小ささ、速さ遅さが、自然の水の流れや、風に吹かれる雲を見てるような自然な感じ、といいましょうか。ヤンソンスならではの解釈が入って、普通ではないことをしてる部分もあるようだが、なぜかどれもが自然なこと、自然が変化している様を体感しているような気持ちになった。すごい! 最強だ! 絶妙

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