サイモン・ラトル 指揮 

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目

ブラームス/交響曲第1番

ブラームス/交響曲第2番

2008年11月30日 西宮、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

 念願のベルリン・フィル、しかも関西公演ツーデイズの二日目。昨夜の大阪公演の興奮冷めやらぬまま、オープンしたばかりの関西最大商業施設・阪急ガーデンズのすぐ近くにある西宮、芸文センターへ。今度は三階の左側サイド席、前から十列目ちょっと。昨夜とは比較にならない距離だが、楽員一人一人の様子はよく分かるし、何よりもオケ全体が見えるのがいい。

 楽員がステージに登場。昨夜とは趣が違う。フルートのエマニュエル・パユ、ホルンのラデク・バボラークなど、ソロ・アルバムも売れているスター級のプレイヤーも勢揃い。コンマスも安永徹が登場。ヴィオラの清水直子とオーボエのアルブレヒト・マイヤーは昨日も出ていたと思うのだが、何せ見え辛かったもので…。昨夜、私の目の前ほんの1メートルほどの所でヴァイオリンを弾いていたペーター・ブレムは、後方の席へ移動した様子。

 前半は日本人が大好きな(?)ブラームスの1番。コンサートで聴いた回数ナンバー・ワンの曲かもしれない。アーノンクールみたいに古楽指向のアグレッシヴな解釈で攻めてくるかと思いきや、意外にラトル、真正面から堂々とブラームスに対峙したような重厚な演奏。音色は明るいし、旋律線は流麗だが、少なくとも軽快な演奏ではない。オケのパフォーマンスがすごい。ベルリン・フィルは常に全力投球するオケだと話には聞いていたものの、実際に目の当たりにすると圧倒される。弦楽群など、海のように波打っている。

 中間二つの楽章も、奇をてらわない正攻法のアプローチで、テンポもあまり極端に動かしたりはしていない。木管などソロがすこぶる上手いので、生演奏だと聴き惚れてしまって、楽譜の解釈どうこうという所までこちらの思考がなかなか追いつかない。第4楽章のアルペンホルンの主題など、バボラークによる朗々たる素晴らしいソロをパユのフルートが受け継ぐという夢のソロ・リレー。たった一人のフルートで会場全体の空気をびりびり震わせるという離れ業をやってのける。なにか特殊な楽器を使用しているんじゃないかというくらいの音量である。

 トロンボーンのコラールが又、最弱音ながら深く、柔らかく、驚異的サウンドを響かせる。コーダはなかなか様になっていて、前半で早くもブラヴォーの嵐。残響音の余韻が消えるまで誰も拍手をしなかったのは良かった。ラトルは、管楽器のソロ奏者を立たせるのに、自ら後方座席へ行ってプレイヤーの肩を抱いて立たせていたのが印象的。各人それぞれ、激しいブラヴォーを浴びていた。

 後半は2番の交響曲。こちらはさらにトロンボーンが活躍する曲だが、ラトルはあまり強調している様子はなく、むしろマスの響きにブレンドさせた感じ。第2楽章でホルン・ソロに少しミスというか、乱れがあったが、この曲も鉄壁のアンサンブルで客席を圧倒。ずっしりと量感のある響きも純ドイツ風で聴き応えがある。世界トップクラスのオーケストラに、ここまで必死の演奏をされたらもうひとたまりもない。正に入魂のパフォーマンス。参りました。また関西へ来て下さい。会場の反応もすさまじく、アンコールはなかったものの、熱烈なブラヴォーにラトルは再び一人でステージへ呼び戻されていた。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 クラシックビギナーなのに、今年はウィーン・フィルに続き、ペルリン・フィルにも行かせてもらうことに。いいんだろうか。難しいことはわからないけれども、やっぱりこんな何もわかってない私にも、ベルリン・フィルのすごさは伝わってきた。一流と言われる人達は、技術的なことは当然ながら、放熱するエネルギーのすごさみたいなものがハンパじゃないんでしょうね。それが3階席の私にも、音とともに生で伝わってきた。ぶるっと身震い。あの人もこの人も、熱い演奏をしている! 熟練の人達の熱い姿ってすごみがある! それなのに、その個々の熱さを出しながらも全体的には統一している、という奇跡的な状態がずーっと続けられているのだからすごくないわけがない! ブラッヴォー!

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