大阪センチュリー、100回目の定期演奏会。二都物語と称し、東京都交響楽団と合同でハイドンの交響曲第100番、アルペン・シンフォニーというユニークなプログラム。二階後方の座席。小泉和裕を生でみるのは初めてだ。アルプス交響曲は昔、朝比奈隆と大阪フィルの演奏(大阪厚生年金会館)できいた事がある。 小泉和裕は邦人指揮者の中でも最も好きな一人。輝かしいキャリアの持ち主だが、キャラも面白い。大阪センチュリーの指揮者になってから、ちょくちょくTVでも見かけるが、おっちょこちょいなオモシロお父さんの印象。京都市交響楽団の楽員さんがある番組で言っていたが、相当せっかちな人らしい。NHKの芸術劇場で、黒崎めぐみアナウンサーを相手にあれほどギクシャクした空気を作り出したゲストを他に知らない。少し前までは、ラウドでリッチなサウンド・メイキングとリズム感の良さでは、我が国随一の指揮者と言われていたけど(最近の指揮者はみんなリズム感が良いからねえ…)。 公演プログラムによると、ハイドンは管楽器が都響、弦がセンチュリーとの事。私はこの曲、アーノンクールの激烈なディスクでしかきいた事がないので、この演奏はとても柔らかく、マイルドに感じる。軍隊を表す打楽器が派手に打ち鳴らされる場面でも、音楽的で誠にバランスがよい。この指揮者らしく、若々しい躍動感に溢れた演奏。 後半はアルプス。この曲は生できくと実に楽しい。大阪センチュリーのような中編成オケでは普段演奏できない曲だろう。都響も小泉和裕と縁の深いオケだから、合同演奏にはぴったりかも。両楽団コンマスのナンドール・セデルケニ様と矢部達哉クンが並んで座っているのも面白い光景だ。曲が始まった途端、誰かがビニール袋をワサワサいわせはじめた。すぐ止めれば気にならないものを、アルプスに夜明けが訪れるまで約二分間、ずっとワサワサ。周囲の人達は注意して止めさせて欲しい。 演奏は素晴らしい。各部に瑞々しい表情が息づく、小泉和裕らしい豊麗な演奏だが、棒の振り方も端正だし、キャラも天然っぽい感じなのに、どうしてこんな演奏が出来るのだろう。不思議な人だ。それでも、この演奏を聴いていると、この人がまごうかたなき天才で、ウィーン・フィルに最年少でデビューし、ベルリン・フィルやアメリカのメジャー・オケに次々と客演していった経歴の持ち主である事が、素直に納得できる。でも、普通は舞台裏に配置する狩りの角笛のバンダを、オケの後方で演奏させたのは失敗かも。音が大きすぎる。というか、オケ本体よりも大きい。とても、遠くから響いてくるという感じではない。それ以外は、晴れ晴れとした感興が横溢する、魅力的な演奏。オケも合同演奏とは思えないほどのまとまり。《登山》の低弦なんて、勢いあまってミシミシいったりしている。カーテンコール終了後、両団体のメンバー同士があちこちで握手しあっているのが印象的だった。いいなあ、アーティストって。 |