オルフのカルミナ・ブラーナは、昨年夏に京都でも聴いたが、なかなか生で聴ける曲ではないので、平日の夜にも関わらず、仕事終わりで急いで駆けつけた。二階席左寄りで、ステージ全体が見渡せるポジション。大植氏はテレビでよく見るが、生で聴くのは初めて。 ハイドンのチェロ協奏曲は二曲とも大好きだ。この夜は1番の方。ウィスペルウェイの名前はよく耳にするが、生でもCDでも聴いた事がなかったので、全くのお初。まずはイントロで、オケのイントネーションに違和感。弦の付点音符にレガートを付けて演奏しているのが、どうもしっくりこない。古典はこういう所が難しい。ちょっと変な事をやると、すぐ不自然になる。アーノンクールなんて相当大胆にやっているのに、それなりの説得力があるから凄いと思う。 大植氏は、テレビだと顔芸が激しすぎてちょっと鑑賞に差し支える所があり、今回は遠いし、背中だし、大丈夫かと思ったらとんでもなかった。よく真横を向くので顔が分かっちゃう。しかも腰は振るわ、ソリストとキスするんじゃないかというくらい顔を突き合わせるわ、とにかく忙しく、どうしても見ていて笑いそうになる。慣れが必要だ。 ウィスペルウェイも身体が大きい上に落ち着きのない人で、格好いいフレーズをぐんと弾き終えた時に、その勢いでコンサートマスターをガン見したり、もっと激しい時はそのまま振り返って、オケの方を「どうじゃ!」という感じで見たりしている。しかし、第3楽章の速弾きなどテクニカル面には目覚ましいものがあり、客席から大いに歓声が飛んだ。アンコールはバッハの無伴奏組曲第6番のサラバンドと第1番のプレリュード。 後半はカルミナ。冒頭から、たっぷりと間を取って芝居っ気たっぷりの表現。テンポも遅めで、ティンパニや大太鼓を強打させてバーバリスティックな迫力満点。合唱は、もう少し声量があればとも思うが、京都の時のアマチュア合唱団と違って、さすがに発声も音程もしっかりしている。最近は、ダンス・ミュージックばりにノリの良い演奏が多いこの曲だが、大植氏は敢えて武骨な造型で、中世ドイツのあか抜けないムードを強調した印象。 もっとも、居酒屋の箇所などで、尻を振りながら指揮者が踊りまくる場面も散見。全休止から全合奏に飛び込む時など、「い〜よいしょ〜!」と、かけ声みたいなのが聴こえてきたりして、笑わずに聴くのは難しい。周囲を見回すと、ニヤニヤしながら聴いている人もちらほらいて、免疫のない人にはやっぱり耐えられないんだなと実感した。ソリストは皆、声も美しくて優秀。知らない歌手ばかりだったけど、とても良かった。 |