長年のクラシック愛好歴の中で、小澤征爾の生演奏をきくのはこれが初めて。言い訳ではないが、この人、関西での公演にはそれほど熱心じゃないような気がする(びわ湖ホールではオペラをやっているけど)。新日本フィルを生で聴くのも今回が初めて。席はまたもや三階右サイド、指揮者の右上から見下ろすポジション。先月くらいから、この辺の席の常連になりつつある。 まずはブラームス。ソリストは楽団のソロ・コンサートマスター。小澤氏もムーティと同様、さりげなく振り始めるタイプらしい。タクトなし、楽譜なし。新日フィルの響きが素晴らしい。特に、ホルンを伴うトゥッティが良い。さすがは小澤氏が手塩にかけた、我が国を代表するオケの一つだ。ソリストは、繊細な響きとしなやかなフレージングが美しく、一聴した所、チョーリャン・リンの系統という印象。見た目は葉加瀬太郎っぽいけど。指揮者の性向もあってか、重厚なブラームスではないが、もっと激しい感情表現などあっても良いかも。 後半は、プロコフィエフ。何と第2組曲のみというプログラムだが、そのせいで普段あまり生では聴かない曲も入ってくるのが楽しい。《モンタギュー家とキャピュレット家》はさすがに大迫力で、オケの力量示す。両家の対立を表す有名な弦の旋律は、付点音符が三連符気味にユルく演奏されてしまう事も多いが、さすがは小澤師匠、付点のリズムをきっちりと正確に処理していて、すこぶる気持ちがよい。 ソロ奏者もみな達者で、金管もホルン、トロンボーンなど豊かな音色で好演しているが、前者は高音域でミスを連発して残念。又、テューバのソロが、音色、もりもり膨らむクレッシェンド共に素晴らしい。さらに、弦セクションが日本のオケとしては珍しくエモーショナルな弾きっぷりで、見ていて思わず引き込まれる。ボウイングのせいかもしれないが、コンサートマスターの没入の激しい弾き方に影響されているか、激しく弾く人を中心に採用しているのかも。《ジュリエット墓前のロメオ》では、ティンパニの鋭い強打も緊張感満点。小澤氏はやはり暗譜で指揮。 アンコールは第1組曲の《タイボルトの死》。人気のある曲なのにプログラムに入っていなかったから、聴衆は大満足だろう。《ジュリエット墓前のロメオ》が静かに終わって、コンサートの最後としては物足りない感じも残るので、このアンコールはプログラムの一部として最初から意図的に組まれたものかもしれない。かなり速いテンポであったが、オケがちゃんと付いてゆく所が凄い。弦のアンサンブルもぴったり付けている。唯一、クライマックスでスネアドラムが二台入ってきて、スネアの音ばかり目立ちすぎるのが難点。演奏終了後、近くのサイド席から「ギャホー!」という奇声が飛んだが、誰か興奮しすぎたんだろうか。 |