クリストフ・エッシェンバッハ 指揮

フィラデルフィア管弦楽団

ラン・ラン(ピアノ)

曲目

チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番

チャイコフスキー/交響曲第5番

2005年5月21日 京都コンサートホール

 指揮者、オケ共に生演奏は初鑑賞。三階のやや左側の座席。かつては、ロン毛にクリクリお目目の天才青年ピアニストとして名を馳せたエッシェンバッハだが、長らく注目していなかったので最近写真を見てびっくり。指揮者に転向した事は知っていたけど、頭はつるつるで、僧侶の服みたいなのを着ていて、別人のごとき風貌に。

 1曲目はラン・ランの弾くチャイコフスキー。華麗なるフィラデルフィア・サウンドを期待していたら、何だかちょっと、くぐもったような響き。コンサートマスターが中国系の人なのと、ティンパニ奏者が女性なのは全然知らなかった。ラン・ランは、先日サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルと同じ曲を演奏している映像が放映されたばかりだが、映像付きだと顔芸が面白すぎて困る。ヨダレを垂らさんばかりに陶酔したり、目をクリクリして赤ちゃんみたいな顔したり、韓流スター並みに男前の表情でキメたり、観客を笑かそうと必死である。それでいて、超絶テクニックで聞き手を圧倒するから侮れない。曲が曲だけに、腕も手先も全部機械なんじゃないかという瞬間も続出。初めて見るエッシェンバッハの指揮姿はこれも独特で、時折妙な格好でスウィングしたり、ピョコリンと飛び跳ねたりもする。

 ラストは、ラン・ランお得意の決めポーズ。打鍵の後、目をつぶって宙に掲げた両手を顔の前で握りしめ、「神様ありがとう」的な恍惚の表情。ベルリンではたっぷりコレに浸っていたけど、今回はやりきらない内に客席からブラヴォーの嵐。まったく凄いピアニストが出てきちゃったものだ。迫力も凄いけど、詩的な表現力も凄い。アンコールに応えてピアノを弾き始めた途端、会場がどよめく。どっかで聞いたメロディだと思ったら、日本の唱歌(何だったっけ?「兎追いし、かの山〜」)をアレンジしたもの。

 後半のシンフォニーでは、オケの人数がぐっと増え、ティンパニも貫禄のあるおっちゃんに交代。始まってびっくり、コンチェルトの時とサウンドが違うじゃん。前半は若手メンバーで構成されていたのかも。極上のフィラデルフィア・サウンドに思わずとろける。弱音から強音まで美麗そのもので、トゥッティでも耳に柔らかく、腹に響いてくる割には全然うるさくない。こんなサウンド、本当にあるんやね。第2楽章のホルン・ソロなんて、甘〜く、柔らか〜く、一体どうなっとんねんという演奏。ただ、各パートが美音の限りを尽くすも、コンセルトヘボウやゲヴァントハウスの時みたいなコクがなく、文化の奥行きみたいなものがあんまり見えてこないのは、やっぱりアメリカのオケって‥‥。エッシェンバッハは全楽章をほぼ繋げるように演奏。遅いテンポで彫りの深い表現をとっていて、なるほどこれなら文句無しに立派な演奏。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 今回私が注目したのは、やはりラン・ラン。演奏中のラン・ランの百面相見たさに、乗り出し気味に鑑賞。といっても3階席からなので、テレビのようにアップで見れない物足りなさがあり。しかし、本来顔より演奏に集中すべきで、これはこれでよかったのかも。チャイコフスキーの甘〜く華麗な旋律は、ラン・ランにぴったり。今日も完全燃焼でした。

Home  Top