ムターは初めて生で聴く。いわゆる、リサイタルというのも初めてかも。私がクラシックを聴き始めた頃にデビューしているので、何ともう芸歴30周年。まあ、十代でデビューしていたらその位の年数にもなるだろう。オーキスと組んでからも22年になるというから凄い。彼女のブラームスは、ワイセンベルクがピアノを担当した80年代のディスクを持っているが、この度オーキスとの再録音盤も発売される。私達の席は三階右端辺りの前から二列目。 さて、ムターはチラシの写真通りブルーのドレスで登場。最初はホールが広すぎて音が届きにくいかと思ったが、単に歌い出しが弱かっただけで、フォルテは堂々たる鳴りっぷり。ただ、ムターの作品への適性からいうと、やはり1曲目より2曲目、2曲目より3曲目という感じで、3番が最も良いという感じ。イメージ的にはもっと激しく没入して弾く人かと思っていたが、あまり上体を動かさない弾き方だった。オーキスも落ち着いた伴奏ぶり。このピアニストには地味な印象しか持っていなかったけど、タッチも音色も美しく、なかなか印象的。 アンコールは、なんと次々に5曲も演奏。二人だけだから、幾らでも演奏できるかも。最初は「モア・ブラームス!」と言ってハンガリー舞曲第2番を演奏。ムターらしい、熱気溢れる表現。次に第1番を、ものすごいアッチェレランドで終えて客席を沸かせ、これで終了かと思いきやオーキスが「サンキュー、ブラームス!」と言って子守唄を演奏。それから、拍手に応えてマスネのタイスの瞑想曲。これが、息を飲むようなピアニッシモを駆使したすごい演奏で、後ろの席の年配の女性達も「こんなタイス、初めて聴いたわ」と語り合っていた。さらに最後、ハンガリー舞曲第7番でオーラス。大サービスだが、本人達も結構楽しそうだった。 客席からはブラヴォーが飛び、スタンディング・オベーションの人もちらほら。外に出ると、サイン待ちの人が長蛇の列を成していた。さすがスターだ。今日はツアー初日だったが、盛況で良かった。 |