先日CDが発売されたばかりの、西本&スミ・ジョーによるツアー・コンサート。曲目もほぼCDのまんまだが、後半がシェエラザード&ボレロと怒濤のオーケストラ・プログラム。会場は、西本ファンと思しき女性達で埋め尽くされて異様な雰囲気。 オケは、初めて聴く団体だが、非常に優秀。技術的にもそつがない上、東欧やロシアのオケらしい暖かい素朴な響きがいい。《こうもり》序曲で華やかに始まり、スミ・ジョーの登場。実にショービジネス向きの人で、サービス精神旺盛。ちょっと演技も混ぜて、オペラの舞台を彷彿させる歌い方である。これが《椿姫》ともなると、衣装も着替え、瀕死の演技をしながら舞台袖からよろよろ現れたりと、コンサート形式とは思えない役柄への没入ぶり。しかも声の美しさ、テクニック共に圧倒的。アリアだけでなくレチタティーヴォも選曲して、オペラの一場面を再現しようというコンセプトで一貫。 途中、オペラの舞台のように拍手が入って、指揮者が進行待ちをする瞬間もあり。しかし、スミ・ジョーのサービス精神はその後からが本領発揮というか、なんと3曲もアンコール。まずはオッフェンバック/歌劇《ホフマン物語》〜“生け垣には小鳥たち”、機械人形の動きを模して途中で動きを止め、西本氏がスミさんの背中のネジを巻いて復活するというコミカルな演出で客席を沸かす。次は有名なアリア、プッチーニ/歌劇《ジャンニ・スキッキ》〜“私のお父さん”をたっぷりと歌い上げ、最後に「皆さんお休みの時間です」と(韓国の?)子守唄で締めた。この二人、CDのジャケットなど、明らかに宝塚の男役女役をイメージしたような写真になっていて、普通のクラシック・ファンにとっては違和感があるが、演奏自体はすばらしい。 後半のプログラムは、楽員達はもうぶっ倒れる寸前じゃないかと思う。《シェエラザード》のような長い曲の後にボレロまでやるなんて。お得意のロシア音楽だけあって、《シェエラザード》は堂に入った演奏ではあるが、楽章ごとに盛大な拍手が入るのは、やっぱり落ち着かない。別に拍手してはいけないという明確なルールはないものの、伝統的な慣習に従うのもクラシック鑑賞の一部という気がするのだけれど。ソロの多い曲ばかりだが、オケがとにかくすばらしい。《ボレロ》は凄まじいクライマックス形成で、指揮者の音楽設計の才とオケの底力を見事に示す。でも、みんなフラフラだろうな。 聴く方も大変で、前半で3曲アンコール、後半で長丁場とあって、休憩込みで三時間に及ぶ、平日の夜とは思えない長〜いコンサート。疲れました。それと文句を言いたいのがパンフレット。写真満載の大型豪華パンフレットは、ファンにはいいけれど、プログラム記録として買っておきたいだけの人には困りもの。簡単なリーフレットでもいいから別に用意して欲しかった。 |