指揮者もソリストも初めて生で聴く。アリス=紗良・オットは、少し前にテレビ(情熱大陸)の密着取材を見て、これは凄いピアニスだなと気になっていたら、なんとフジの番組(僕らの音楽)でポップスの伴奏をしていて、奔放なキャラクター共々気になっていた所。一度生演奏を聴いてみたいと思っていたが、前から6列目の座席でじっくり聴けてよかった。 まず京響常任指揮者の広上氏が、ものすごく小柄な人で驚いた。雑誌のインタビューなどは見るけれど、テレビなどで動いている所を見た事がなかったので、大きな人かと思っていたのだった。《フィンランディア》は間の多い曲だが、その度に指揮者が大きく息を吸うので、かなり気になる感じ。でも、オーケストラを指揮するというのは基本的に「呼吸を合わせる」事なんだな、というのが改めてよく分かる。 グリーグのコンチェルトは好きな曲なのだが、ピアニストにとっては演奏効果があまり派手じゃないせいか、あまり演奏されないような。この曲が聴きたかったのも足を運んだ理由の一つ。早足でパタパタと入ってきたアリスちゃんは、いかにもさりげなく弾き始めたかと思いきや、冒頭からたっぷりと間をとったロマンティックな造形。テレビでは激しい弾きぶりが印象的だったけれど、意外に弱音を生かした繊細な表現が目立つ。席が近いからか、硬質なタッチも宝石のような美しさ。 アンコールは、ショパンの有名な嬰ハ短調ノクターンを演奏。彼女も客席に曲目を告げてから演奏するタイプ。しかも流暢な日本語だ。もう一曲は、リストのラ・カンパネラ。こちらは、曲名を言い終えないうちから弾き始めたりして、ジャズ・ピアニストみたい。これが凄まじい演奏で、客席を熱狂させる。何度もカーテンコール。 北欧の曲ばかりのプログラムで、後半はシベリウス。先月サロネンの名演を聴いたばかりなので、さすがに分が悪いかなと思ったが、こちらも悠々たる名演。旋律を豊かに歌わせて素晴らしい。最近の京響はいつ聴いてもうまいなと思う。優秀なプレイヤーが揃っているようだ。80年代くらいの京響は、大阪フィルみたいにミスばっかりの団体だったけど、今は大フィルとは比べ物にならないほど技術的躍進を遂げたのではないかと思う。音楽への熱っぽい没入ぶりも、優等生的な態度が抜けない他の国内オケと違って好感が持てる。 ただ、広上氏は、あまり近くで聴くと、息を吸う音やうなり声が客席に響き過ぎ。楽譜をめくる時も、大きな音を立ててぴしゃりとめくる。アンコールもグリーグ、組曲《ホルベアの時代から》〜アリア。演奏前に指揮者のスピーチ。大阪でこんなにたくさんのお客さんが入ってとても嬉しい、また京都にも来て下さいとの事。時々こういう、弦楽パートのみの静かな曲をアンコールで演奏する場合があるが、アンコールというものの意味あいからして、できるだけ全員で演奏できる曲をやって欲しいと思う。 |