J・シュトラウス/喜歌劇《こうもり》

佐々木典子、小森輝彦、小林沙羅、ヨッヘン・コヴァルスキー

小貫岩夫、大山大輔、片桐直樹、志村文彦

剣幸、桂ざこば

佐渡裕 指揮・芸術監督

兵庫芸術文化センター管弦楽団

ひょうごプロデュースオペラ合唱団・ダンスアンサンブル

演出:広渡勲

2011年7月17日 西宮、兵庫県立芸術文化センター大ホール

 毎年定番になった芸文センター夏のオペラ公演。今年の《こうもり》はまあ好きな曲なのでいいけれど、ここ数年はバーンスタイン作品やオペレッタが続いていて、やっぱりヴェルディやプッチーニ、ワーグナーなど、王道のオペラをがっつりやって欲しい。今回は数年前の《メリー・ウィドウ》に続くオペレッタで、演出家や衣装、美術に同じ面々を揃え、ざこば師匠と宝塚スターを狂言回しに持って来るのも同じ。前回が好評だったのだろう。ポスターには完売御礼とある。地方都市でオペラを一週間上演して、チケットを完売にできるというのは凄い事ではないかと思う。

 座席は一階サイド席の最もステージ寄りブロック(実際には二階である)、ピットが斜め上から間近に見られる位置。ピットにゲストとして、元ウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場のメンバー、ヴェルナー・ヒンク(コンサート・マスター)、ペーター・ヴェヒター(ヴァイオリン)、ミラン・サガト(バス)、さらに国立歌劇場の現役メンバー、マティアス・ヒンク(ヴィオラ)、マティアス・シュルツ(フルート)、フォルクスオーパー管のリカルド・ブルー(チェロ)が入っており、彼らのパフォーマンスもじっくり見られる。

 話題のベルリン・フィル・デビューから凱旋した佐渡さんは、心なしか自信たっぷりの指揮ぶりで、序曲の締めくくりに両手を交互にぐるんぐるん回す指揮にはびっくり。全体にコテコテの鉄板ギャグをちりばめた演出なので、年齢層が高い客席は大ウケ。メトロポリタンを観た直後だからどうかとも思ったが、ステージの近くで聴いたせいか、日本人の歌手陣も充分に豊かな美声でオペラの醍醐味あり。むしろ、ウィーン国立オペラでもこの役を歌ったカウンターテナーのコヴァルスキーの方が、ファルセットのせいか弱々しく聴こえた。

 ただし、コヴァ氏は日本語のセリフを大量に発し、笑いもとって大健闘。ざごば師匠のアドリブ漫談も、政治をはじめ時事ネタを盛り込み、大いに盛り上がっている。看守フロッシュの役は、外国でも役者が延々とアドリブで喋って客席から笑いをとる事があるが、ざこば流関西型コミュニケーションはオペラに馴染みが薄い観客を巻き込むには良いのかも。唯一、台詞が入る関係もあるのか、今回は日本語訳での歌唱で残念。その上さらに字幕も出しているので、別に原語で歌っても良かったと思うのだが。

 サイモン・ホルズワースのセット美術は今回も巨大化アイテムが売りで、第二幕の舞台後方で巨大なシャンパン・グラスが積み上げられているのにびっくり。このオペラは三幕物だが、今回の公演は二部構成にして第二幕の途中で一旦休憩を入れている。後半が始まった時、セットのシャンパン・グラスが半分くらい減っていたのは粋な演出。ホリゾントも夕暮れから夜景に変わっており、時間の経過が表現されていて秀逸。これに較べると、第一幕と第三幕は平凡なセット。スティーヴ・アルメリーギの衣装も、オーソドックスを目指した印象。

 カーテンコールでは、ざこば師匠や剣幸にではなく、ちゃんと歌手にブラヴォーが飛ぶあたり、クラシック・ファンの心意気が感じられる。《メリー・ウィドウ》の時と同様、シュトラウスの他の曲などをアンコールでレビューにしてサービス満点だが、剣幸だけは地声でなくマイクで歌っていたようだ。声楽の基本がよく出来ている宝塚歌劇出身の人でも、さすがにオペラ歌手並みの声量は無理なのだろうか。

まちこまきの“ひとくちコメント”

 2階席の前の方の席だったので、ピットの中も佐渡さんも舞台もよく見れてなかなか良かった。日本人キャストの歌声も、前の席だからか、びんびん響いていい感じ。

 ざこば師匠がちょいちょい登場すると、その度に佐渡さんもピットから師匠を見守り、何かあれば助け船なのかつっこみなのかを用意してそうな雰囲気。二人はちょっと絡んで、時事ネタで笑いをとってました。

 舞台が始まる前、蝶とこうもりの扮装をした出演者が客席に降りていくと、予想外に、年配のお客さん大喜びでちょっとびっくり。みんな握手したり手を振ったり、やたらノリの良いのは関西だから?

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