久々のフェスティバル・ホール。私達の席は、一階のほぼ最後列近く。天井が低い。安価な席ばかり狙う私達の場合、一階席で聴く事はあまりない。デュトワとチェコ・フィルという組み合わせの珍しさに、曲目も人気の近代曲2作品とあって、とんでもない盛況かと思いきや、案外ガラガラ。そう言えば、直前まで新聞広告が出ていたのを見た気もする。とは言ってもホールがデカイので、ザ・シンフォニーホールや京都コンサート・ホールのようには埋まりきらないのかもしれない。最前列ブロックの左右両サイドは、座席に覆いをかけて全く使用していない様子。一体どういう事なのだろう。 このホールの音響はいつ来ても不満。とにかくデッドで響かない。自分達の拍手の音ですら、空間に吸収されてしまって、パチパチと虚しく聴こえる。チェコ・フィルのような、平素は素晴らしい音響を誇る名ホール(ルドルフィヌム)で演奏している団体は、何だか可愛そう。それでも、立派なプロコフィエフだ。乾いたサウンドの中から、なんとか暖かみのある響きが聴こえてくる。ただし、デュトワの抜粋選曲は個人的に不満。ロミオとジュリエット絶命の後、あのロレンス神父の慈愛に満ちた主題が流れてこないと、何だか救われない。特にブラヴォーの声もなく、普通の拍手。 後半の《春の祭典》は、冒頭のファゴット・ソロの妙技に唖然。技術的にどうこうというより、ニュアンスの豊かさが凄い。こんなに表情を付けて歌わせるには、相当高度なテクニックが必要だろう。全体に、予想していた通りアナログ感満開の演奏で、時折オケの統率が乱れかける場面もあったが(客演だとさすがのデュトワもこうなりますわな)、この曲はこういう感じの方が絶対に面白い。完璧なデジタル型演奏では物足りない。ラストへ向かう迫力も相当なもので、印象としては、思っていたよりもずっと能力の高い近代的なオケという感じ。デュトワの指揮も、意外に激しくて鋭い。白熱して満場の拍手。やはりファゴット奏者には大きな喝采が送られた。いつかは、ザ・シンフォニーホールでチェコ・フィルを聴いてみたい。 |