ヤニック・ネゼ=セガン 指揮 

ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

庄司紗矢香(ヴァイオリン)

曲目

シューマン/歌劇《ゲノフェーファ》序曲

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第2番

ブラームス/交響曲第4番

2013年2月2日 西宮、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

 指揮者もオケも初めての生演奏。指揮者に至ってはCDでも聴いた事がなく、演奏に接する事自体が初めてである。ロッテルダム・フィルは、デ・ワールトやテイトといった私好みの指揮者がレコーディングに起用しているので、昔から聴いてきた団体ではある。ただ、同じオランダのコンセルトヘボウ管に似ていると言われる割に、私は全く似ていないと思う。柔らかな中身を繊細な殻でふわっと包んだような“マカロン型”のコンセルトヘボウ・サウンドと比べると、ロッテルダムの音は中身が詰まっていて、表面を滑らかに磨いた“チョコレート型”だと思う。

 分かったような分からないような妙な例えはさておき、突然春がやってきたかという季節外れの陽気の中、地元在住のため徒歩で会場に向かう。本日のお席は、三階の右隅。オケは既にほぼ全員がステージに出ている。楽員は若い上にコンマス以下女性が多く、ヴァイオリンなどは8割方が女性ではないかという感じ。ホルン、コントラバスにも女性の姿あり(こんな事をわざわざ書くと差別的と取られる捉えられかも)。

 ネゼ=セガンは小柄な人で、コンマスの女性よりもひと回り小さい上に、スーツ姿なので余計に小粒に見える。若々しくエネルギッシュな指揮ぶりだが、現時点ではさほど才気を感じさせる棒さばきではないかも。もっとも、ビシュコフやガッティの指揮姿を最初に見た時も「え?」と思ったので、指揮の才能とバトン・テクニックは必ずしも一致しないのかもしれない。

 1曲目はシューマンが唯一書いたオペラの序曲で、ディスクもそんなには出ていないが、4曲のシンフォニーに匹敵するくらい魅力的な曲で、もっと演奏されて良いように思う。演奏も、メイン・プロの中では一番生き生きとしていた感じ。この公演はステージの使い方が独特で、三段ある雛段の内、一段目と二段目の中央に木管セクションというのは普通として、一段目は左翼にホルンを配し、右側は途切れてガラ空きの所へ打楽器を配置。二段目は右翼にトランペット、トロンボーンで、左翼には何もなし。最後列にはなんとコントラバスを並べ、右端にティンパニという配置。パート間の音の分離を重視したためだろうか。

 プロコフィエフは庄司紗矢香のソロ。弾き始めると同時に聴き手の心を掴んでしまう、凄い音。オケも巧いが、作品としては1番のコンチェルトの方が好きである。どの楽章もユニークで、楽想は面白いのだけれど、音楽の展開が冗長に感じられるような。視覚的にステージを見ると、へえ〜この曲の編成にはティンパニとトロンボーンがないのだなあと、改めて驚く。CDで聴いていると、そういう事はなかなか意識しない。アンコールはバッハのパルティータ第2番からサラバンド。

 ブラームスは、明るい音色でがんがん鳴らすスタイル。ネゼ=セガンはジュリーニを敬愛しているそうで、クリアな響きや流麗さ、優美な身振りは美点だが、基本的な芸風は全然似ていない。若々しく元気一杯に流れてゆく音楽は、ダイナミックで動的。抑制が生み出すデリカシーとか、寂寥感や陰影は一切ない感じ。ティンパニは固いバチを使っていて、アクセント明瞭。最後の2楽章はアタッカで続けて演奏し、フィナーレではフルート・ソロでぐっとテンポを落とすなど、オケのドライヴは自在。結構なブラヴォーが来たので、まあ好みの問題かもしれない。

 オケは優秀で、デ・ワールト時代の暖かくて滑らかな響きを維持しており、是非このまま個性を失わないで欲しい。アンコールは、これもブラームスのセレナード第1番からスケルツォ。ディスクでも数回した聴いた事がない曲で、ロビーのホワイトボードで確認するまで何の曲か分からなかった。狩猟ホルンをイメージしたような軽快な舞曲で、演奏も素晴らしく、メインの曲より演奏者の体質に合っていたかも。

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