チョン・ミュンフン 指揮 

フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団

エカテリーナ・バカノワ(ソプラノ)

シャルヴァ・ムケリア(テノール)

ジュリアン・キム(バリトン)

曲目

◎ヴェルディ/歌劇《リゴレット》

  第1幕 二重唱“愛は心の太陽だ”、アリア“慕わしき御名”

      合唱“静かに、静かに”

  第2幕 アリア“彼女の涙が見えるようだ”、合唱“殿、殿”“何だ?”

      カバレッタ“強い愛の力が私に命ずる”

  第3幕 カンツォーネ“女心の唄”、四重唱“いつかお前に会った気がする”

◎ヴェルディ/歌劇《椿姫》第2幕

  シェーナとアリア“燃える想いを”

  シェーナと二重唱“天使のように清らかな娘”

  シェーナとアリア“プロヴァンスの海と陸”、フィナーレ

2013年4月13日 大阪、フェスティバルホール

 新生フェスのこけら落とし公演。ビルのエントランスを入ってすぐに大階段、ホール内からロビーまではロング・エスカレーター、ロビーは吹き抜けから垂れ下がるきれいなライトと、非日常感を演出するなかなかの雰囲気。舞台の間口の広さ、座席数は変わっていないそうで、以前のホールは客席がだだっ広すぎると思ったが、新生ホールは舞台との一体感があり、一階の後ろの方でもさほど遠い感じがしないのがいい。

 フェニーチェは初めて。この日は特別コンサートで、本当は舞台上演の《オテロ》を観たかったのだけれど、平日なので諦めた。ついでに書くと、新生フェスの来日オケ、オペラの公演は平日公演が多く、務め人には厳しいラインナップである。ミュンフンがフェニーチェといい関係にあるとは知らなかったが、彼はスカラ・フィルとも友好関係にあるし、ローマ聖チェチーリア管のシェフをしていた時期もあるので、イタリア人と相性が良いのかも。

 旧フェスは響きがデッドで奥行き感が浅い印象だったが、新生フェスは改善され、残響の長い近代的なホールという感じ。エイジング不足ゆえか、響きが生硬で熟成されていない感はあるが、オケのまろやかで輝かしいサウンドは十分堪能。《リゴレット》の序曲だけは、金管の弱音に乱れがあったが、それ以外は素晴らしいパフォーマンス。《椿姫》のジプシー風の合唱曲で、打楽器奏者が派手な色の二本の棒を出したので何かと思ったら、それで床をドンドンと叩いて迫力を強調。

 独唱は知らない人ばっかだが、ロシア、グルジア、韓国と三人とも非イタリア系。ところがこれが素晴らしい歌唱で、会場を大いに湧かせた。韓国人のバリトンというと、先日西宮でキュウ・ウォン・ハンを聴いたばかりだが、ご友人の佐渡さんには悪いけど格が違うというか、キムの深く、豊かな声と表現力は欧米人と並んでも超一級。

 こうなると、変ちくりんな前衛演出でセットを組んでやるより、音響的に有利な演奏会形式の方が、音楽そのものを楽しめる感じ。《リゴレット》はダイジェスト的な選曲で印象も散発的だが、《椿姫》は第2幕の後半を丸ごと抜き出していて、ドラマ性も抜群。俄然熱っぽさを増したミュンフンの指揮もドラマを煽り、途中で泣きそうになったくらいオペラの世界に没頭。

 また合唱が見事で、強弱のニュアンスの豊かさとダイナミクスの幅の広さが、日本の合唱団とは桁違い。オペラの本場の座付きコーラスとして、舞台上で演技込みのパフォーマンスを行っているだけはある。何といっても声の力と表現力が違う。こうなると、ますます《オテロ》が観たかった。アンコールは《椿姫》から“乾杯の唄”。会場、大盛り上がり。

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