大野和士 指揮 

ウィーン交響楽団

インゴルフ・ヴンダー(ピアノ)

曲目

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番

マーラー/交響曲第5番

2013年5月19日 西宮、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

 リヨン歌劇場オケとの2009年来日公演以来、4年振りの大野和士鑑賞。私は中学生の時、他ならぬこの西宮の市民会館で同じく5月に、まだ20代だった大野青年が振る市民オケ、西宮交響楽団の定期演奏会を聴いた事があり、その時の鮮烈な印象は今でも記憶に残っている(曲はチャイコフスキーの《ロメオとジュリエット》とブラームスの4番)。それから29年が経ち、同じ西宮で名門オケを引き連れた大野氏の演奏を聴くのは、ひたすら感慨深い。

 ウィーン響の生演奏を聴くのもこれが初めて。意外にレコーディングに恵まれないオケで、自分のCD棚を見渡しても、インバルとのショスタコーヴィチ全集、アーノンクールとのシューベルト《未完成》、ハイドン《天地創造》《四季》、ジュリーニが振ったベートーヴェンとリストのピアノ協奏曲(前者はミケランジェリ、後者はベルマン)、T・トーマスが振った《ウィーンの春》ライヴ映像のDVDくらいしかディスクがなかった。

 オケによっては、若い楽員が多いとか、女性メンバーが半数を越えるとか、服装がファッショナブルだとか、見た目の印象も色々だが、同団体は年齢分布も性別分布も至ってオーソドックス。アジア系楽員も少ないようだが、ハープ奏者が男性なのと、フルート、オーボエの若い女性首席奏者が実に達者なのが目を惹く。音色的には、これはもうウィーンならではというか、ウィーン・フィルに勝るとも劣らぬほど弦の艶やかな響きとフレージングが魅力的で、これは他の国のオケには到底真似が出来ないかも。

 演奏は、大野氏の円熟を物語る見事な出来映え。コンチェルトは、ヴンダーのソロも素晴らしく、よく響く深い音色と感興豊かな表現に溢れて圧倒的。オケも、弦のリズムにアクセントを付けて緊張感を醸し出したり(フィナーレ)、創意工夫があって単なる伴奏に終らない。ヴンダーに熱狂的なブラヴォーが来て、客席の明かりが付いてもまだカーテンコールに呼ばれていた。アンコールの《月の光》も、たっぷりとした音色と繊細な表現が組み合わさってユニーク。

 マーラーは、抑制を効かせつつも随所に力感を解放する名演。何せ旋律線が常に嫋々と歌われるので、日本人好みの情感豊かな表現と言えるかもしれない。一方でリズム感が良く、アゴーギクも自在。自分のマーラー像を明確に持っている感じもあり。速いパッセージのスピード感は迫力満点で、弦のアンサンブルなどミシミシときしむような音が上がっている。トレモロでクレッシェンドするような箇所も、ものすごく印象的。

 本日はツアー最終日なので、演奏に開放感があると思われる反面、ホルンにミス多し。難しいと言われるフィナーレ冒頭のソロも、やはり音を外した。それと、大太鼓が全体的にズレがちに聴こえるが、これは座席(二階の右バルコニー席)による時間差だろうか。コントラバスは、最近よく見かけるようになった、最後列に並べるスタイル。コーダは見事に決まり、激しいブラヴォーが浴びせられる。

 アンコールは何と3曲。大曲の後に大サービスだが、これは最終日だけなのだろうか。曲はトリッチ・トラッチ・ポルカ、ワルツ《春の声》、ポルカ《雷鳴と電光》と、ニューイヤー・コンサートばりのウィンナ・スタイル。さすがはウィーンの名門オーケストラという演奏。

Home  Top