5年前に初めて生で聴いて以来のベルリン・フィル。関西公演ツーデイズの二日目で、昨日は新生フェスチバルホールで《春の祭典》だったのだが、そちらの人気が高いのか安いチケットは取れなかった(それしか買えないのでもう無理)。もっとも今日の公演も、安い席とはいえ今まで購入した中でのチケット最高額を更新(つまりオペラ以上)。それでも4階の二列目隅っこだから驚くが、会場全体を見渡すとほぼ満席の様子。しかも結構若い人もいる。 団員登場。ものすごい大人数。《春の祭典》ばりの巨大編成ではないだろうか。4階席からなので何となく確認できた限りではあるが、コンマスはダニエル・スタブラヴァで、フルートのエマニュエル・パユ、ホルンのシュテファン・ドール、ファゴットのダニエレ・ダミアーノは入っている様子。 ブーレーズの曲はよく分からず。この人の曲は、何を聴いても全然分からない。日本の作曲家みたいに、分からないながら感覚的に面白いというのでもない。まあオケのデモンストレーションとして聴けば、それなりに楽しめるかも。いつも思うがコンサートのプログラムって、今生きている作曲家の曲はよく入るが、新ウィーン学派とかその辺の曲はまず聴けない。これだけコンサートに行ってるのに、ベルクやウェーベルン、シェーンベルクの曲を一度も生演奏で聴いた事がないのはどういうわけか。 後半はブルックナー。編成ががくっと減る。舞台上で視覚的にみるとよく分かるが、木管が2管編成なのに金管が4管で、例のワーグナー・テューバまで同数が舞台に乗るとなると、普通に考えればバランスが悪すぎる。遠目なので自信がないが、ワーグナー・テューバの一人はサラ・ウィリスのようなので、ホルン奏者が兼任しているのかもしれない(《春の祭典》にもテナー・テューバが必要だし)。 オケのソノリティがとにかく素晴らしい。ブルックナーの曲は、オケによっては聴いていて疲れる事も多いが、ベルリン・フィルの音は透明度が高く、ラウドな響きでもタッチの柔らかさと艶があって、耳に心地良い。特にホルンのソロ、ソリは、聴き手をとろけさせるような美音。パユのフルートも5年前同様、一人でオケ全体分の音量を出して客席の度肝を抜く。 ラトルの指揮は、レガートで滑らかなラインを作ってゆくもので、同じくレガートで息の長いフレーズを得意としたカラヤンの伝統も感じさせる造形。テンポもゆったりとしていて巨匠風の佇まいだが、アクセントなどタッチを柔らかく表現する箇所が多い。各楽章のエンディングも、ふわりとソフト・ランディングさせるような棒さばき。第2楽章は、ラトルなら速めのテンポで流動性を追求してもよかったのではと思うが、やはりじっくりと取り組んだ印象。ハース版採用といいつつ、シンバル、トライアングル入りの演奏。 5年前の公演もそうだったが、フォルティッシモで終了しても残響が消えるまで拍手が入らないのがいい。チケットが高いせいか、みんな身を乗り出して、必死で耳を傾けている。この公演に絞ってチケットを取っている人も多いのだろう。オケのトップ奏者にも激烈なブラヴォーが浴びせられ、アンコールこそなかったが、ラトルのみ最後に呼び出されて、会場全体がスタンディング・オベーション。ラトルは、舞台側を見て「オケはどこへ行ったんだ?」というパントマイム・ジョークをまたやっていた。 |