■フィンランド旅行(2005.9)

ヤルヴェンパー 〜アイノラへの旅〜

 フィンランドの国民的作曲家、ヤン・シベリウス。彼が結婚してから亡くなるまで53年間も暮らし、作曲活動も行ったアイノラという家がヤルヴェンパー近郊にあります。幼い頃からずっとシベリウスの音楽世界に憧れてきた私ですが、旅行ガイドにも詳しい行き方が出ていないし、たぶんありきたりの観光地だろうという事で、特にこの旅行で訪れるつもりはありませんでした。今から思えば、シベリウス・ファンの風上にもおけぬ、たわけた考えです。シベリウス・ファンの国では極刑に値します。

 しかし、ヘルシンキ初日はいきなりドヨ〜ンとしたお天気。大自然を満喫し、森と湖で激しくリラックスしようという意気込みを無惨に挫かれた私達は、結局アイノラに行ってみる事にしました(失礼な‥‥)。一応インターネットで、アイノラを訪れた人の訪問記などを検索し、印刷して持ってきていたのですが、それによると、ガイドブック等のアクセス情報にあるヤルヴェンパー駅ではなく、一つ手前のキュロラという駅で降りれば徒歩10分という話です。どこの誰が書いたものとも知れず、ガイドブックにも果敢に反逆を試みるアナーキーな情報ですが、これを信用して私達もキュロラ・コースを選択。

 ところが、この人も詳しい道順までは書いていないので、誰もいない田舎道をさんざん歩き回って結局見つからず、残るもう一つの小道を入っていってダメならもう諦めようという事に。そこへ通りかかった、赤ん坊連れの若いショートカット主婦。拙い英語でアイノラについて尋ねた所、この人がちゃんと場所を知っていたのです。しかも、近道まで教えてくれました。近道と言っても、暗い森の中に分け入ってゆく、よく注意しないと道筋が分からない獣道みたいなものですが、半信半疑で言われた通りに行くと突然、アイノラの駐車場に続く舗装道路にポロリンとまろび出ました。ボーイッシュ・ママ、ありがとう!

キュロラの駅を出てすぐに、Ainolaの表示を発見して一安心。

しかしこれ以降全く表示がなく、1時間近くさまよい歩くことに・・・。

 

 念願のアイノラに着くと、周囲には人っこ一人おらず、観光地どころではありません。案内所も閉まっていたので、外観だけでも見ておこうと森を抜けると、テレビや写真で見たあのアイノラ荘が目の前に現れました。しかも玄関が開いています。勇気を出して中へ声を掛けると、係の女の子がいて、ここでチケットを売っているとの事。日本語の案内書までありました。中に入ってみると、実際にシベリウスが弾いていたピアノや、書斎、キッチンや寝室までが当時の雰囲気のまま残されていて、静けさの中にまだ生活が続いているようで、圧倒されます。

 

 時に、案内書を読んでいた妻のまちこまき氏が声を上げました。なんと、彼女の誕生日とシベリウスの誕生日が同じだったのです。思わず運命を感じてジーンとしていると、彼女がまた大きな声を上げました。なんとなんと、この日はシベリウスの命日だったのです。見れば、二人とも涙ポロリんちょ。たまたま成り行きでここへ来たと思っていたけど、実は呼ばれて来たのかも。感動に浸る間もなく、フィンランド人らしき観光客の団体が入ってきて、携帯電話の妙な着メロ(フィンランドでは流行中なのか、あちこちでこのヘンな着メロを聞きます)を鳴らしたりしはじめました。元々そんなに広くない家の中がぎゅうぎゅう詰めになったので、もう一度ピアノだけ間近に拝んでから外へ。敷地の中には、シベリウスのお墓があり、この家の愛称になっている奥さんのアイノも一緒に眠っています。ちょうど誰もいなかったので、二人でお墓参りをしました。

 

 帰りは、ヤルヴェンパーまで歩く事にしましたが、30分以上かかりました。駅周辺は道も分かりにくく、もしヤルヴェンパーから歩いていたら、きっとアイノラにはたどり着けなかったでしょう。ちなみに、ヘルシンキからヤルヴェンパーまでは近郊列車で一時間半。ただし、キュロラで降りる場合は各駅停車に乗らなければならないので要注意です。

野生の勘だけでヤルヴェンパーに無事到着!

急行が停まるだけあり、素敵な外観の駅でした。

 

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