フィンランドの国民的作曲家、ヤン・シベリウス。彼が結婚してから亡くなるまで53年間も暮らし、作曲活動も行ったアイノラという家がヤルヴェンパー近郊にあります。幼い頃からずっとシベリウスの音楽世界に憧れてきた私ですが、旅行ガイドにも詳しい行き方が出ていないし、たぶんありきたりの観光地だろうという事で、特にこの旅行で訪れるつもりはありませんでした。今から思えば、シベリウス・ファンの風上にもおけぬ、たわけた考えです。シベリウス・ファンの国では極刑に値します。 しかし、ヘルシンキ初日はいきなりドヨ〜ンとしたお天気。大自然を満喫し、森と湖で激しくリラックスしようという意気込みを無惨に挫かれた私達は、結局アイノラに行ってみる事にしました(失礼な‥‥)。一応インターネットで、アイノラを訪れた人の訪問記などを検索し、印刷して持ってきていたのですが、それによると、ガイドブック等のアクセス情報にあるヤルヴェンパー駅ではなく、一つ手前のキュロラという駅で降りれば徒歩10分という話です。どこの誰が書いたものとも知れず、ガイドブックにも果敢に反逆を試みるアナーキーな情報ですが、これを信用して私達もキュロラ・コースを選択。 ところが、この人も詳しい道順までは書いていないので、誰もいない田舎道をさんざん歩き回って結局見つからず、残るもう一つの小道を入っていってダメならもう諦めようという事に。そこへ通りかかった、赤ん坊連れの若いショートカット主婦。拙い英語でアイノラについて尋ねた所、この人がちゃんと場所を知っていたのです。しかも、近道まで教えてくれました。近道と言っても、暗い森の中に分け入ってゆく、よく注意しないと道筋が分からない獣道みたいなものですが、半信半疑で言われた通りに行くと突然、アイノラの駐車場に続く舗装道路にポロリンとまろび出ました。ボーイッシュ・ママ、ありがとう! |