Gentle Thoughts / Lee Ritenour & His Gentle Thoughts

曲目List

1. Captain Caribe〜Getaway

2. Chanson

3. Meiso

4. Captain Fingers

5. Feel Like Makin’Love

6. Gentle Thoughts

Artists

Lee Ritenour (g)

Patric Rushen (key)

Ernie Watts (sax)

Dave Grusin (key)

Steve Forman (per)

Anthony Jackson (b)

Harvey Mason (ds)

 70年代フュージョン・ブーム以来、日本でもラリー・カールトンと並んで人気フュージョン・ギタリストとして知られているリー・リトナーの77年発表作です。

 このアルバムは当時流行っていたというダイレクト・カッティング方式によりレコーディングされています。つまりオーバーダビング等による音質劣化を避けるためにメンバー全員が演奏するのと同時にマスターディスクの溝を刻んでいくわけです。一発録りどころかA面B面それぞれブッ通しで弾かなければなりませんし、ミキシングなども後でやり直すというわけにもいきませんから、想像しただけでもかなり大変なことだというのがわかるでしょう。このことに関して「Jazz Life 2005年5月号」には、こんなことが書かれていました

 

この『ジェントル・ソウツ』には、演奏が異なる2種類のアルバムが存在するのをご存知だろうか。「フィンガーズ」はもちろん、収録6トラック全部がである。タイトル、ジャケット、ライナーともに全く同じ。外側の違いは「帯」の《TAKE-2》の文字とレコード番号(ビクター音楽産業VIDC-1とVIDC-101)のみ。「帯」がなければ見分けは見事につかない。

「ダイレクト・カッティング」盤はひとつのマスターから3万枚しかプレスできない。彼らは追加プレスを見越して(またはセイフティとして?)「テイク2」を残していた。同じ曲目、同じ曲順、同じアレンジだがそこはジャズマン、ソロだけは全く異なるものとなった。結果、3万枚が売れて「テイク2」盤もリリース。市場には演奏が違う同じタイトルのアルバム2種類が流通したというわけだ。

その後CD化(現ビクターエンタテインメントVICL-60186)されているが、そこに収録されたのは「テイク1」(カッティングと同時に録音されたテープがマスター)だったので、現在「テイク2」はLPでしか聴けない。(「Jazz Life 2005年5月号」より引用)

 

 ・・・マスターディスクを2枚も作っていたとは・・・。そういえば、「CDよりLPの方が音エエらしいで」って誰かに聞いたことがあったんですけど、言われてみれば、後にCD化されたということは、録音時に録ってあったテープが音源なのだから、そういうことになるわなと納得。でも私はLPは聴いたことがないので、実際どれほど違うのかは知りません。そんなに違うのかな? とにかく、ダイレクト・カッティングというだけでも凄いのに2枚分もやっていたということを知って驚いていたわけですが、さらにこんなことが書かれていました・・・

 

ちなみにリトナーは、この時期連続してダイレクト・カッティング盤を録音している。2枚目が『シュガー・ローフ・エキスプレス』(3ヵ月後の77年8月)、3枚目が『フレンドシップ』(翌78年5月)で、その『シュガー・ローフ』の当時のライナーに「収録テイクは全6テイクのうちのテイク3」という記述があり、内容よりその事実に驚嘆する。1枚を録るために6枚分、つまり12面分完奏してお皿を刻んでいたわけだ。(「Jazz Life 2005年5月号」より引用)

 

 ・・・うーん、何を考えとんねんリトナーよ。

 デイヴ・グルーシン作曲の《Captain Caribe》からアース・ウインド&ファイアーの《Getaway》へと続く1曲目では、リトナーのカッティングが満載なのが嬉しいです。ギブソンES-335になんとかいうコンプレッサーをかけた、あのザクザクした音がメチャクチャカッコいいです。いやでもこれ今聴いてもホンマにイイ音ですね。リトナーのカッティングといえば、「ツクツトゥーン」っていうやつありますよね。この曲でも何度か出てくるんですけど、3拍目のウラの3連符をブラッシング(左手で弦をミュートして弾く)で「ツクツ」とやっといて、4拍目に低音弦をグリッサンドで「トゥーン」と下がるんです。わかります?よくマネしてやったもんです。ちなみに2拍目のウラから「ツクツトゥーン、ツクツトゥーン」と2回続けるのもアリです。

 そして4曲目はご存知《Captain Fingers》。リー・リトナーといえばやっぱりこの曲でしょう。イントロのスピード感溢れるカッティングは、爽快さの中にもちょっとお洒落なテンション・コードが効いています。それに続いて登場するアンソニー・ジャクソンのピック奏法によるベース・ラインや、ハーヴィー・メイソンのさまざまな変化をつけたドラミングもホントにカッコいい。そしてこの曲のハイライトは何といっても全員でユニゾる超難度のキメの部分です。圧巻です。あと、ギター・ソロの最後で、リトナーが繰り返す1拍半フレーズにメンバー全員がついていく部分は、ポリリズム的感覚がスリル満点です! 2004年、このアルバムのレコーディング当時のメンバーが集結してスタジオ・ライヴの収録をしたり、マウントフジ・ジャズフェスティバル(こちらは、ベースがエイブラハム・ラボリエル、ドラムがアレックス・アクーニャでした)に出演したときの映像を見たのですが、この曲もやっていてとても感激しました。そのときのインタビューで言っていたのですが、なんと25年ぶりに演奏したらしいです。やっぱり彼らでもこの曲は難しいんですって、そう言ってました。

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