マイルス・デイヴィスやデイヴィッド・サンボーンなど数々の一流ミュージシャンと共演したり、また彼らのアルバムをプロデュースしたり、さらにプロデュースを手掛けたアルバムの中でベースは弾くわ曲は提供するわと天才ぶりを発揮してきたマーカス・ミラー。その彼が1993年に満を持して世に送り出したアルバムです。マーカスはそれまでにもソロ・アルバムを出してはいましたが、ポップな感じのつくりで決して能力全開の本気モードという感じではなかったので、やはりマーカスにはもっとすごいやつを作って欲しいという期待を持っていたわけです。そんなときにこのアルバムが作られたんですが、それはもう本当に衝撃的でした。まさに能力全開でスラップからフレットレスまであらゆるテクニックとセンスを惜しみなく披露し、エレキベースの持つ可能性を最大限に引き出して我々に示してくれたのです。素晴らしい! もしマーカス・ミラーを聴いたことのない人がいたらボクちゃんコレを薦めちゃう! ベースという楽器に対して持っているイメージをすっかり変えられちゃう! ゲスト・ミュージシャンもデイヴィッド・サンボーン、ジョー・サンプル、ウェイン・ショーター、ハイラム・ブロック、トニー・ウィリアムス、オマー・ハキム・・・と凄い顔ぶれです。マーカスはベースの他に、バス・クラリネット、ギター、シンセ、ドラム・プログラミング、さらに歌もこなしています。 このアルバム以降も、より洗練された素晴らしいアルバムを次々と出していますが、いい意味でバラエティに富んだ選曲、ベース・プレイヤーとしてのマーカス、そして超豪華な参加ミュージシャン、すべてが完璧なバランスだし、なんと言っても聴いたときの衝撃度という点では、このアルバムを超えるものはないように思います。では簡単に曲の紹介を。 《Panther》いきなり32分音符連発のベース・ソロ。必聴。 《Steveland》最初のソロをウェイン・ショーター(ts)、後のソロをサンボーン(as)と豪華な使い分け。 《Rampage》生前のマイルスの音源を利用していて、あたかも一緒に演奏しているようにアレンジされているのが面白い。 《The Sun Don't Lie》フレットレスのメロディが美しい曲。ジョー・サンプルのピアノが圧倒的な存在感を放つ。 《Scoop》ベースのタッピングから始まるこの曲は、マーカスが特有のリズム感で弾くスラップによるメロディがとにかくカッコいい! ポール・ジャクソンJr がリズムギターで参加。 《Mr.Pastorius》マイルスのアルバム『Amandla』に収録されているジャコパスへ捧げた曲。マーカスのベースのみで録音された短い作品。 《Funny》ボズ・スキャッグスのアルバム『Other Roads』に収録されている曲。マーカスの歌声が聴ける。 《Moons》打ち込み+キーボード+バスクラ&ベースというマーカスによる一人レコーディング。フレットレスの暖かい音色が非常に心地良い曲。驚異的なフィンガー・ピッキングのソロは思わず唸ってしまう! 《Teen Town》言わずと知れたウェザー・リポート時代のジャコ作の名曲。これをスラップでやってしまうという発想が凄い。ウェザーの「Birdland」のフレーズをチョロっと入れるという洒落の利いたギター・ソロを弾いているのは、ジャコとライヴなどでよく共演していたハイラム・ブロック。オマー・ハキムがスネアやシンバルを担当。 《Juju》カーク・ウェイラム(ts)とエヴァレット・ハープ(as)がバトルを繰り広げる。 《King Is Gone》ウェイン・ショーター(ts,ss)、トニー・ウィリアムス(ds)とのトリオ。マイルスに捧げた曲。 《'Round Midnight》セロニアス・モンク作の美しいスタンダード。ボーナストラックながら、これがなかなか素晴らしい演奏で、ヴォーカルはレイラ・ハサウェイ、ピアノはジョー・サンプル。トム・ブラウンのトランペットが渋い! |